人生どん底からの復活劇。 NASU新メンバーは “完全体セル”を目指すデザイナー
2021年5月より株式会社NASUにデザイナーとして久本晴佳さんが入社しました。
久本さんはNASU代表の前田さんが主宰するオンラインサロン「前田デザイン室」出身。
2021年の2月からNASUでアルバイトを始め、3ヶ月後に正社員になりました。
NASU入社までの経緯とNASU新メンバーとしての意気込み、前田さんとの素敵な師弟関係についてお話をうかがいました。
株式会社NASUの久本晴佳です。
久本:NASUにデザイナーとして入社した久本晴佳です。大阪芸術大学のデザイン学科卒で、2019年に新卒でデザイン会社に就職して1年半ほど働いていました。2020年の6月から前田デザイン室に入って、2021年の2月からNASUでアルバイトを始めて、5月から正社員のデザイナーとして働いています。
前田:まるっきり僕の後輩だよね。コースも一緒だし。
久本:そうですね!グラフィックデザインコースです。4回生のときに前田さんが先生で来て、そのときから前田さんのことは知ってました。
前田:そうだったの!?初めて知った。
久本:前の先生が辞めるって聞いて、新しい先生はどんな人が来るんだろうって調べていたらTwitterで前田さんを見つけたんです。生徒のことや授業のことを正直になんでも言っていて、先生なのにSNSでこんなに発信するって面白いなと思って見てました。
前田:そうだったんだ。
久本:そのあと前田さんがTwitterで「前田デザイン室を始める」って発信してたんです。でもそのときは就活中でバイトもできなかったし、ポートフォリオの制作費もかかるし、時間もお金もなくて見送りました。
前田:そこから2年後に入った感じかな?なんで入ろうと思ってくれたの?
久本:就職から1年くらい経って仕事もちょっと落ち着いてきたし、コロナの影響で時間もあるし、社会人になってお金の余裕もあるし…。入ろうかなって思い始めたところで前田さんのnoteの『前田が行く』シリーズがゴールデンウィーク限定で無料公開してたんですよ。その記事で「躊躇しないキャンペーン」っていう言葉を見て確かに!と思って入りました。
前田:それも初めて知ったな〜。無料公開して良かった。
久本:ちょうど会社も辞めたいなって思っていて、何かを変えたくて入ったっていうのがあります。
───前の会社を選んだ理由と、1年半で辞めた理由を聞いてもいいですか?
久本:「早起きしてパンプス履いて出勤して、みんなそろって研修を受けて」っていうのを自分がしているイメージができなくて、大企業的な会社は最初から考えなかったんです。私の好きなもの、大事にしているものを「いいね」って言ってくれそうな会社にポートフォリオを送りました。就職した会社は送ってから2週間くらいで、とんとん拍子に決まりましたね。
前田:「自分がこういうことやりたい」じゃなくて、自分と相性が合う会社を探してたってことかな?
久本:どっちもですかね。アートやギャラリーが好きだったから、そういうものに関われるところがいいなっていうのはありました。そうじゃないにしても、デザインだけじゃなくて企画からできるところがいいなと思っていて。
前田:アートってどんな感じのもの?
久本:大学1回生の時にイラストを描いていて、アマチュアの公募展とかに応募して絵やグッズを売ってたんです。そのときに実力はあるのにアピールが上手じゃなくて作品があんまり売れてない人がたくさんいて。そこをデザインでカバーできたらいいなって思ってました。
前田:アート支援みたいな感じかな。前の会社はそれができそうだったから入ったの?
久本:できそうだったんですけど私が入ったタイミングでその事業が縮小しちゃったりで、あまり関われなかったんです。
───アート事業の縮小が、会社を辞めたきっかけになったんですか?
久本:それもちょっとあります。でも社内のコミュニケーションがなかったのが一番大きいですね。わからないことがあったときにも気軽に聞ける雰囲気じゃなくて。本当にこれでいいのかな?ちゃんといいものになってるのかな?って不安が常にあったんです。
前田:コミュニケーションがないのはしんどい。
久本:当時婚約していて、結婚式をやるってなったときに会社の人を呼ぶってなるじゃないですか。でもちょっと…気まずいなって思っちゃったんですよ。
前田:それは大きいね。
久本:結婚式に来てもらうって、めっちゃありがたいし嬉しいことのはずじゃないですか。でもそれが気まずいと思っちゃう人のところで働くってどうなんやろって思ったときに「あ、違うな」って。
前田:辞めたいって悩んでる人のいい目安になるかもね。「会社の人を結婚式に呼びたいかどうか」って。自分が変わることで相手も変わるかもしれないけど、そこまでやっても結婚式に呼びたくないと思っちゃうなら辞めるって考えていいかも。
久本:そうですね、結局それが大きなきっかけで。でも会社を辞めて2ヶ月後に婚約破棄になったんですけど。
───仕事辞めたのがきっかけで婚約もやめた…という感じですか?
久本:辞めた後の私があまりにものんびりしてたから、相手も「アレ?」ってなったのかもしれないですね、今思えば。どんぐり拾ったりしてたんで(笑)。
前田:まあ僕もどんぐり拾ってるのをTwitterで見て、ちょっと「アレ?」って思った。こんな感じの人やったっけ?って。
久本:そう思いますよね(笑)。
前田:24時間マエダテレビのときに綾さん(NASUコミュニティマネージャーの浜田綾さん)から「ひちゃこ(久本さん)がすごくいい!」って聞いてたんだけど、会社辞めてどんぐりってギャップがすごくて。実はそういう、のんびり生きるのが合ってるタイプだったんだなと思った。
久本:24時間マエダテレビの運営は、最初からは参加してなかったんですよ。やろうか悩んでいるうちに人数がいっぱいになってしまって。お客さんで参加しようかなと思ってたところで1枠空いたので、途中から参加しました。みんなで協力して作り上げていく雰囲気がすごく楽しかったです!
前田:マエダテレビはコミュニケーションしかなかったよね。
久本:前の会社と違って自分から「ここはどうなってるんですか?」ってどんどん聞けたし、聞ける雰囲気があって。こうしたほうがいいって自分の意見も言えるし、その答えに自分も素直に納得できるし。コミュニケーションしながらみんなで何かをするって本当に楽しいなって思いました。
前田:コミュニケーションに飢えてたんだね。でもそれって前の会社が悪いってわけではなくてスタンスの違い、職人ぽい人が多かったんだろうね。
久本:就職するときは職人っぽい雰囲気もいけると思ってたんですけど、前田デザイン室に入って私はコミュニケーションが好きなんだなって気づきました。
前田:良い・悪いじゃなくて、合う・合わないだからね。
久本:前田デザイン室は能動的なものがないと難しいかなって印象はあるけど、どう動いても大丈夫で、ちゃんと受け止めてもらえる雰囲気があると思います。
NASU入社までの経緯
───会社を辞めてからNASUでバイトを始めるまでの間はどんなことをしていたんですか?
久本:ちょっと気が滅入っちゃって、辞めてからはしばらくふわっと暮らしてました。「合ってない、ここじゃない」って思いながら働くのが辛くて、逃げるようにやめちゃったので。
前田:逆校で「会社の辞め方を教えてください」って企画してみんなから聞いてたよね。
(※逆校とは…前田デザイン室の企画のひとつで、学校やセミナーとは立場が “逆” 転。教えてほしい側の人がイベントを企画して教壇に立ち、教えてくれる人に参加してもらう。)
久本:前田デザイン室で聞いたらええやんって思ったんです。いろんな人いるし(笑)。いろいろアドバイスをもらって8月に会社を辞めて、婚約破棄になったのが10月で。人生どん底な気持ちでした。もうデザインも何もかも向いてないかもモードになっちゃったんです。お花屋さんとかカフェとかで、ふわふわっとアルバイトしようかなと思ったり。そんなときに『サウナランド』のプロジェクトが始まって。
前田:そのタイミングだったんだね。
久本:初心者には厳しい、ちょっとハードルがある枠って感じの募集内容だったんです。ここに飛び込んで頑張れたら、またデザインが楽しいって思えるかもしれないなって。もう1回やってみよう!頑張ってみたい!と思って応募しました。
前田:前田デザイン室を活用してくれてるね。会社辞めるときも復活のときにも。
久本:やってみたら楽しい!って思えたんです。自分が担当してる以外のページで手が足りないとかイラスト欲しいとかっていうのも、全部がんがんやりました。
前田:めちゃくちゃ頑張ってたよね。
久本:やっぱり作るのって楽しいし、私は作ることが好きなんだって思えて嬉しかったです。その勢いのまま『勝てるデザイン』のカードゲームのプロジェクトにも入りました。前の会社で頑張れなかった後悔があったんですけど、頑張ること自体は嫌いじゃないって気づけたのは前田デザイン室のおかげです!
前田:頑張れなかったの?デザインは頑張ってたんでしょ?
久本:頑張ってはいたんですけど…。いつもこれでいいのかなって思いながら働いてたので、頑張り切れなかった感じですかね。会社の人とあまりコミュニケーションが取れなくて、何考えてるか読めなくて怖かったんです。だから聞きたいことがあっても聞けなかったり、自分の意見も言いにくい雰囲気で。
前田:それはわかるな。僕も何を考えてるかわからない人は採用したくないし。ひとりで何でもやるってしんどいよね。誰かが反応してくれるから頑張れるっていうのはある。NASUは仕事中にしょうもないことを言っても、みんなちゃんと反応してくれるじゃない。そういう雰囲気がいいなと思う。
久本:「頑張れる場所、頑張りたいと思える場所でやっていくのもいいのかな」って思い始めたときにTwitterでNASUのアルバイト募集があって。今年の1月半ばくらいですね。NASUは頑張りたいと思える場所だからやってみたいけど、どう思われてるんやろっていう不安があって。
前田:どうって?
久本:1年半で会社辞めるわ婚約破棄されてるわで、問題あるヤツだと思われてるんちゃうかなって(笑)。
前田:問題あるとかは思わないけど、どんぐり拾うほうが好きなんかなって言うのは思ってたかもしれない(笑)。でもサウナランドとカードゲームでの頑張りも見てるから、本当は頑張れる子なのかなとも思ってた。
久本:アルバイト募集の前に正社員の募集もあったんですけど、そのときは勇気が出なくて。まずはアルバイトで入って、ここでずっと働きたいって思えたら正社員にしてくださいって言えばいいし、合わなかったらまた次を探そうと思って応募しました。合う・合わないとか空気感って、実際に入ってみないとわからないって前の会社でわかったので。
前田:結構早い段階で言われたよね。正社員になりたいって。
久本:入ってみたら想像してたよりずっと楽しくて1週間か2週間くらいで言いましたね(笑)。アルバイトだと踏み込めない領域があるんで、それを取り払いたくて。
前田:そのときは「もうちょい待って」って言ったね。『勝てるデザイン』の出版もあったから。
久本:「ただのアルバイトです」じゃなくて、「もっと頑張りたいから正社員になりたいアルバイトです」って早い段階で伝えておきたかったんです。仕事への姿勢とか頑張りたい気持ちを知っておいてほしくて。
前田:仕事で大変だなって思うことはない?
久本:仕事募集のときに前田さんが「仕事だからしんどいこともあるよ、楽しいだけじゃないよ」と言っていて、そこは正直気になってたんです。でも実際に前田さんの近くで仕事をしてみて、ただの労働的なしんどさじゃなくて、いいものを作るために必要なしんどさのことだったんだ!っていうのがわかりました。しんどいけどしんどくないというか。NASUは「いいものを作るためならとことんやろう」という空気があって、それが私にはすごく合ってるなって思います。
───今後、NASUでやってみたいことはありますか?
久本:ギャラリーとか場所作りもしたいし、アーティスト支援もしたいし、デザインもきっちりバシバシできるようになりたいし…。デザインに限らずいろいろやりたいです。
前田:「10億円あったら何したい?」って聞かれた時は、学校を作りたいって言ってたよね。
久本:前田デザイン室のGIF(ギフ)合宿で言いましたね。場所作りをしたいっていうのがずっとあって、それの究極が学校かなと思っていて。
前田:場所作りをしたいと思ったきっかけがあるのかな?
久本:大学生のときに私は裏方でみんなが主役っていうイベントがあって、それがすごく楽しかったんです。成功したら自分だけじゃなくてみんなも嬉しいし、そのイベントをきっかけにみんなの可能性が広がっていくのを見て「あ、この感じめっちゃいいな」って。みんながチャレンジできる場所を作って、どんどん可能性とかやりたいことを見つけていく場所を作りたいと思うようになったんです。
前田:前田デザイン室みたいだね。
久本:そうなんです!私が前田デザイン室作りたかった(笑)。場所作りをして人が集まって、そこでの交流から得るものってすごく大きいんですよね。コミュニケーションが好きなのは、尊敬できる人のスキルとか考え方とかを吸収して成長したいからっていうのもあるんです。完全体セル※を目指しているので。
※セルとは…鳥山明先生による不朽の名作『ドラゴンボール』に登場するキャラクター。 戦闘相手を吸収して力を取り込みながら、完全体に進化していく
前田:コミュニケーションラリーしながら人のいいところを吸収して、人生をデザインしていく感じかな。NASUはすごく合ってるね。
NASU代表 前田高志へインタビュー
───前田さんから見て、NASUでの久本さんの印象はどうですか?
前田:仕事が好きなんだなって感じがする。どんぐり拾う感じは一切ないね。おっとりした喋り方やけど自分の意見をちゃんと持ってるし、常に改善しようとしてる。頼んでないことまで気づいてくれるから、めちゃくちゃありがたいです。
───正社員に採用する決め手になった出来事はありますか?
前田:正社員になる前にちょっと重い仕事を体験してもらいたくて、スマホケースのブランドのロゴデザインを詰めていく段階を一緒にやってみたんです。そこで粘り強く、相当細かく突き詰めていく姿勢を見られたのが大きかったですね。結構ハードで高度な仕事だったし、それを難なく…難なくかはわからないけど、僕から見るとしっかりこなしてたし、いい感じにできていた。
久本:難しかったです!
前田:進め方も良かったんですよね。しょっちゅう何でも聞いてくれるし。コミュニケーションのリズムが良かったです。ラリーができていた。
久本:「正社員なってほしい気持ちはあるけど、重い仕事を1回まかせるね」って前田さん言われたときに、ここはしっかりコミュニケーションラリーしていかないと!って思いました。
前田:おお〜さすが。
───NASU公式サイトに掲載している “VALUE” にもコミュニケーションラリーの項目がありますし、それを実践して成果を出したのは素晴らしいですね!
久本:前田さんにめっちゃ確認しながら進めました。様子うかがいながら、今だ!って聞きに行く感じで。一応、無理なときは無理って言ってくださいねとはお伝えしてたんですけど。
前田:どんどん聞いてほしい!何も聞かずに進めて、あとあと問題出てきちゃうほうが大変だしね。
久本:前の会社で頑張り切れなかった後悔があるので、NASUではどんどんコミュニケーションして、とことん頑張りたいって思ってます!
───これからの久本さんに対して期待することはありますか?
前田:このまま行ってくれたらいいんじゃないかなって思います。1を話して10わかるというか、背景まで推理して理解してくれる。観察力があって気づくのも早いから、何も言わなくてもわかってくれて僕よりやってくれるんですよ。そのうえで頻繁に聞いてくれるから僕も楽。こういう感じでやりたいんだって伝わるし。コミュニケーションが上手いと思う。距離感を詰めるのが自然で上手いよね。
久本:コミュニケーションっていうと、私は前田さんと綾さんが言い合いしてるのが結構好きなんですよ。
───確かにしてますね(笑)。
久本:いい会社だな、いい関係だなっていつも思っていて。私も前田さんと喧嘩できるくらいの関係になりたいなって。
前田:喧嘩はしてないよ(笑)!
久本:お互いに信頼し合ってるから言い合えると思うので、そういう関係を前田さんやNASUメンバーのみんなとできるようになりたいです!
前田:言い合いだらけはしんどいな(笑)。でもそういうパートナーのような関係っていうのはいいね。早くデザイナーとして一人前になってもらって、次はディレクター。ディレクターを極めたら僕のパートナーになってもらうから。
久本:NASUでたくさん吸収して完全体セルになって、自分も見てくれた人も笑顔が増えるような『勝てるデザイン』を作っていきたいです!
〈文=成澤綾子(@ayk_031)/ 編集=浜田綾(@hamadaaya914)/ 撮影=吉田早耶香(@_re44)/ GIF合宿画像提供=岸裕亮(@kissy_camerun)〉