“若手力”のデザイン イベントのアートディレクションとデザイン
2018年6月15日、「若手力〜25歳で突き抜けられる行動指針〜」というイベントが開催されました。そのデザインのプロセスをまとめてみました。今回のお話は「大規模イベントにおけるアートディレクションとデザインとは?」「こういう風に取り組めばいいんじゃない?」というお話です。
このイベントは僕が所属しているオンラインサロン箕輪編集室のプロデュースということもあり、僕はこのイベントのトータルデザインを担当することになりました。イベントの規模が規模だけに、集客や演出につながるデザインはなにげに超重要なのです。イベントはたくさんの人が関わる。だから、たくさんの人が同じ方向に走るための旗(ビジョン)が求められる。告知・集客・コンテンツ・当日の体験・運営側のモチベーション。イベント全体のいろんなところに最大限の効果がでるデザインを意識しました。
まず、この「若手力」の概要をおさらいしておきます。「箕輪厚介」「ゆうこす」「田端信太郎」によるプレミアムトークイベント。テーマは「若手力」。座席はなんと1582席。第一のゴールは“席を埋める”こと。それを実現に近づけるためには2つをポイントが考えられます。
- 単純明快に伝える(誰向けで/どういうイベントか)
- メジャー感(お客さんの安心/運営のモチベーション)
「単純明快に伝える」とはこういうことです。影響力のある本イベントの登壇者のお三方。1582席でも問題なく座席は埋まるでしょう。ただ今回はあまり時間がありません。短時間で「若手力」イベントの認知を加速させる必要があった。単純明快の豪速球のデザイン、ターゲットとなる若者への興味喚起。かつ、記憶に残るグラフィックが必要でした。
そして「メジャー感」。メジャー感とは品質と品格。イベントに対する信頼感です。見た目のクオリティが高くなると 、本気度が受け手に伝わります。デザインで「品格」を作り、たくさんの人が集まりそうなイメージをを感じてもらう。人間というのはみんなが集まりそうなところに集まるから。さらに、運営スタッフのみなさんがこのイベントに関わることにプライドを持てるデザイン。がんばりたい気持ちを増幅させるデザイン。デザインでその気持ちを引っ張っていくことを意識しています。
さっそく、告知バナーのデザインに取り掛かりました。まず考えたことは、Twitter上で「著名人の写真が並んだトークイベント」という見せ方はよく見る。既視感があると記憶に残らないし、目の前をただ景色として過ぎ去ってしまう。だから、差別化とターゲットへの豪速球アプローチとして「“若手力”というタイトルをどどーんと立たせた方がいい」とイベントリーダーに伝え採用してもらいました。というわけで第一弾のビジュアルはこうなりました。
「若手力」のデザインの第1歩はフォント選びからスタートした。通常のゴシック体フォントや明朝体だとかなり堅苦しい印象になる。おじさんくさくなってしまう。そこに「若手感」がなく、まったくシズルが感じられない。若者が自分ごとと感じてもらえるグラフィックにすることが重要です。人は見た目の印象で自分ごとから排除してしまう。例えば、テレビ CMで時代劇の番宣をやってたとして、全く興味がない人は内容は何も入ってこない。ただ「時代劇っぽいな」くらいのことしか心にはない。
今回は、大雑把に言うと言うと“かわいく”する。かわいさは若さだから。フォントは「モリサワA1ゴシック」。角が溶けたようなフォルムをして愛くるしいフォントだ。白に世界で黒い太い線で魅せる。かわいすぎてもダメ。「若手力」は愛らしさと知的さ。若者のビジネスパーソン向け。そんな印象を伝えるための書体選びです。ビジネス書における寄藤文平氏による装丁のイメージ。「入門しやすい愛らしさ+幼稚すぎない」を目指しました。
さらに文字に一味エッセンスを加えている。文字に「土」「花」「芽」のピクトグラムをあしらっている。これは「成長・若者」を意味しているが意味は後付けです。本当の意図は、とにかく文字にワンポイント「色」を入れたかった。これで印象はもっと若者に向けられ、より個性的になり、それはこのグラフィックを見た人の脳へのフックとなるからです。
第2弾の告知グラフィックは会場の写真をつかった。先にも書いた「メジャー感」だ。人が集まりそうなところに人が集まる。ライバルに抜け駆けされる!?という気持ちを煽っている。
「若手力」にはキャラクターが絶対必要。これは早い段階で考えていました。まずは「若手力」「登壇者のお三方」を伝えることを優先してきた。ロゴだけのグラフィックがtwittter上で流れるのをみて、やっぱりキャラが必要だと確信した。メジャー感とお祭り感。そこに参加したい体験したいという気持ちを揺さぶること。第2段階としてキャラクターを用意した。
キャラクターはフォントと同じ「角が溶けたようなフォルム」を意識している。「ちょっとだけかわいくて、大人っぽいかわいさ」。若者のキラキラ、ギラギラをビジネスシズルに落とし込んだのがこちらのイラスト。R25のキャラクターにどこか似てるとtwitterで見かけたけど、狙っているのはまさにそのイメージ。キャラクターがあることによって「Tシャツ」や「ステッカー」などのグッズや「立て看板」や「スライド」などの会場装飾などものとして展開していくとイベント感は増して参加したくなる。
こうして無事に“若手力”は1582席もなんなく埋まり、(実際はゆうこすさんのパワーによるものが大きい)そして、当日のイベントも大盛況。プロジェクトは大成功に幕を閉じました。箕輪編集室のみなさんやイベントプロモーションチームのみなさんのご尽力です。デザインはフラッグとしての役割。あくまでも縁の下の力持ち的な役割です。
イベントではたくさんの人が動く。だからこそ、みんなの力を集約させるためのデザイン。たったひとつのデザインがココロを変える。
デザインにはそんな力がある。
(余談)
アートディレクションとデザインの重要性をわかってくれている人からの依頼は期待に応えたいし、やりがいがある。話はそれるが、これは「仕事」ではない。だから、デザインの検証はほとんどやってない。瞬発力優先で完全にスポーツ感覚でデザインしている。エキサイティングだ。これこそがオンラインサロンでデザインをする楽しさかもしれない。