NASU代表の前田です。

「プロジェクトメンバーの考えていることがバラバラで、同じ方向に向かって進めていない」

そう感じた経験はありませんか? これは明快なコンセプトがないプロジェクトで起こりがちな現象です。

以前の僕は、ひとりでつくる場合であれば自分だけがコンセプトを理解していれば大丈夫だと思っていました。僕の頭の中にだけあるコンセプトは、言葉よりもイメージに近く、それをわざわざ言葉にしなくてもいいだろうと考えていたんです。

今はひとりでつくる場合であっても、言葉にしていくべきだと考えています。チームでものづくりをするなら尚のこと、明確に言葉にしないといけません。言葉にして共有することで全体の解像度が上がり、制作のスピードも上がります。ただ、チームで共有するコンセプトを決めるのは本当に難しい。僕もまだまだ「言葉選び」の段階で手探りをしている状態です。

プロジェクトでのものづくりにおいて、コンセプトをみんなで一緒に考えることは、かなり重要です。僕も会社やコミュニティでプロジェクトを常時30件以上かかえていますが、誰かひとりが導き出したコンセプトよりも、一緒に考えたもののほうがみんなを置いてきぼりにしないし、なにより納得度が高いのです。でもみんなで意見を出し合うのも、意見をまとめていくのも簡単なことではありません。そこで僕が積極的に取り入れている「コンセプトワーク」をおすすめします。

コンセプトワークとは?

コンセプトワークとは、物づくりを牽引し、求心力のある優れたコンセプトを決める手法のことです。コンセプトワークはクリエイターそれぞれに独自のやり方があり、どれが正解というものはありません。

NASUでおこなっているコンセプトワークは、玉樹真一郎さんの名著『コンセプトのつくりかた』が、もとになっています。玉樹さんは元・任天堂の方で(ちなみに僕の2年後に入社してますが年齢は同じです)、累計販売台数が1億台を突破した任天堂のゲーム機「Wii」の企画開発者のひとり。あらゆるコンセプトの本を読みましたが、この本が一番わかりやすかったです。そして、実践的なコンセプトワークのやり方について解説されている書籍なので、ぜひ読んでみてください。

2022年1月に玉樹さんと僕で、コンセプトワークのウェビナーをします。興味のある方は、僕の新著『負けるデザイン』のクラウドファンディングで、ウェビナー視聴セットのリターンを支援していただけると嬉しいです。

コンセプト決めは悪口からはじまる!?

コンセプトは「良いもの・素敵なものであるべき」と考えていませんか? 間違っているわけではないんですが、思い込みから入ってしまうのは非常に危険です。「こうあるべき」というマインドブロックが作用しているうちは、真のコンセプトにたどり着けません。

本質ではなく表面だけをすくい取って、なんとなく決めた「それっぽい」コンセプトに着地してしまう可能性が高い。「ならでは」のコンセプトでなければ、コンテンツの魅力は伝えきれません。

僕は以前までコンセプトをポジティブに直結して考えていました。しかし玉樹さんの『コンセプトのつくりかた』や『13歳からのアート思考』著者の末永さんとの対談から、アイデアやコンセプトは「必ずネガティブを通ってつくられている」と教えてもらいました。

それからコンセプトワークをするときは、思い込みや決めつけによるマインドブロックを壊すために、敢えてネガティブな側面から切り込みます。良いものを作るために欠けているところ、悪いところをまずは炙り出すんです。

「このコンテンツに足りないところは何だろう」「コンテンツが提供される業界の悪いところはどこだろう」など、改善するべき点をはっきりさせます。深く考えず感覚的に、ポンポンとテンポよく、思ったことをそのまま言葉にしていくのがポイントです。「コンセプトを考えている」という状況を、いったん忘れるくらいでいい。

多面的・多角的に、とにかく自由に思考を展開させていく。そうすると自分でも気づかなったコンテンツへの考え方や感情が浮き彫りになってきて、脳内の情報が整理されていくんです。

思考と情報が整理されると、突然「コレだ!」という答えがズバッと浮かんでくる。目の前にあった濃い霧が、何の前触れもなく晴れるんです。この瞬間はめっちゃくちゃ気持ちいいですよ。コンセプトワークで余計なものが削ぎ落とされた先に、最良のコンセプトが浮かび上がってきます。

ただし、コンセプトワークをおこなう際は、本音が言いやすいように、気心が知れた関係性になってからがおすすめです。悪く言うことに抵抗がある人もいるので、チームでやる場合は悪口の強要はしないように気をつけてください。個室にしたり参加人数をしぼったりと、心理的な安全性を確保するのも大切です。

なぜNASUメディアの記事のコンセプト決めたのか

では、実際のコンセプトワークに入ります。今回コンセプトを決めるのは、弊社のオウンドメディアのNASUメディアです。NASUメディアは「ビジネスリーダーにクリエイティブの価値をお伝えする」を目的に運営しています。この「ビジネスリーダーにクリエイティブの価値をお伝えする」が、これまでのNASUメディアのコンセプトでした。

すでにコンセプトがあるのにコンセプトワークをおこなう理由は、より解像度の高い、より強力なコンセプトが必要だと感じたからです。NASUメディアの運営が始まって10ヶ月。記事数は増えつつありますが、もっと更新したいし、もっと読まれたい。そこで今後は、NASU社員の書く記事も掲載していこうと考えています。

ただ、コンセプトが曖昧な状態で「記事の本数を増やそう!」と社長の僕が言ったところで響きません。実際にそうでした。みんな更新することを反対しているわけではないのだけど、何を書けばいいのか? 更新体制はどうするのか? という声があがったんです。そこでコンセプトワークを通して一緒に考え、共有することで不安や疑問を解消し、理解と納得を得られました。

NASUメディアの記事のコンセプトは「スーパーマニアック」

NASUメディアの記事作成に関するコンセプトを決めるにあたり、NASUの社員に集まってもらって、みんなで一緒に意見を出し合いました。まずは、コンセプトワークが終わり、導き出された結果をご覧ください。

コンセプトワークによって導き出された、NASUメディアの記事作成のコンセプトは「スーパーマニアック」です。これだけ聞いてもよくわからないと思うので、結論に至るまでのコンセプトワークの様子をお届けします。

step1:まずはオウンドメディアの悪口から

コンセプトワークの第一歩は、悪口から。世の中のオウンドメディアに対する悪いイメージについて意見を出し合いました。「そのメディアじゃなくても読める記事が多い」「結局は自社商品やサービスを推す記事ばかり」など、僕としても耳の痛い言葉が飛び交います。

たしかに「ならでは」でなくては興味を持ってもらえないし、読みたいと思ってもらえない。でも「自社推し」が強すぎると不信感を持たれてしまう。自社のいいところは知ってほしいし伝えたいけれど、加減が大事ですね。

step2:他のメディアの羨ましいところは?

次は他のオウンドメディアの羨ましいところを出し合います。「バズってる」「みんな知ってる」など、認知度の高さに関する意見が多く出ました。

バズって認知が広がることでメディアを知り、そこから「こんな会社がやってるんだ」と興味を持ってもらう動線は、オウンドメディアの立ち位置として理想的です。ただ、バズるのは簡単ではありません。メディアに来てもらうだけでも大変ですし、もちろん来てもらうだけではダメです。みんなに広めたくなるような魅力のある記事、面白い記事でなければ拡散されません。

step3:NASUメディアに足りないところを炙り出す

ここまでに出た意見を踏まえて、NASUメディアのダメなところ、足りないところを客観的に考察して意見を出していきます。「更新頻度が低い」「ビジネスマンに届いていない」「PVが低い」など、次々にNASUメディアの弱点が出てきました。

「前田ばっかり」は、僕自身も感じている問題です。僕の会社だから依頼するのではなく「NASUだから頼みたい」と言われる会社になるのが、NASUの目標です。ゆくゆくは「NASUの〇〇さんに頼みたい」と指名される仕事を増やしたい。

そのためには、どんな社員がどんな姿勢でデザインに向き合っているのか、もっと知ってもらわないといけません。前田ばっかり状態の解消は重要課題です。更新頻度の低さもPV数に直結するので、ここもなんとかしたい。NASUメディアの改善点がだんだん見えてきました。

step4:そもそもオウンドメディアは読まれていない?

僕は記事を読んでくれる人に対して、読んでよかったと思える価値を提供したい。読んだ先に「プレゼントがあるか」が大切だと考えています。

でも社員の意見を聞くうちに、オウンドメディア全体に対して「そもそも読まない(メディアにアクセスしない)」「よっぽど話題にならないと読まない」という印象を持っていることが判明します。そうなると、気づきや学びを求めてメディアにくることは少ないでしょう。「気づきと学び」をカットします。

誰でも読みたくなる記事とは?をシンプルに考えれば「面白い記事」しかありません。面白いと思ってもらえる記事、そしてメディアの動線になる面白そうなバナーも重要です。目指すのは「どうせ宣伝、どこでも読める」から離れた記事。NASUメディアでしか読めない、単純に読んで面白い、バズる記事です。では具体的にどんな記事を制作していくか、また意見を出し合っていきます。

step5:他のメディアと差別化するには?

NASUメディアでしか読めない記事は、NASUの仕事かNASU社員の記事です。でもポートフォリオのように、事例を紹介するだけのメディアは面白くないのでダメ。どうやって他のメディアと差別化しながら、面白さを出していくのかを考えます。今後のNASUメディアで改善したい点は以下の5つです。

・記事を増やしたい
・応援されたい
・前田ばっかりを解消したい
・他メディアと差別化したい
・面白いと思われたい

この5つをクリアしたうえで、できればデザインを絡ませた記事にしたい。欲張りすぎかもしれませんが、ファンになってもらえるような記事を社員が書ければ、クリアできそうな気がしてきました。

では、どうしたらファンになってもらえるのか。その人の良さやこだわりに触れたときに、人は誰かのファンになりますよね。そこで「偏愛と言えるほど、自分が好きなもの。こだわっているものをテーマに記事を書いたらどうか」という意見が出ました。

自分を深掘りした、その人にしか書けない偏ったマニアックな記事なら、他のメディアでは絶対に読めません。自然に「ならでは」の記事になるし、デザイナーが愛してやまないものにはデザイナーの本質、根本が現れていてるから自然とデザインにつながっていきます。

「スーパーマニアック」な記事でフェチを解剖する

NASU社員のマニアックな部分を前面に出し、それぞれのフェチを解剖することが、デザインの面白さを知ってもらう記事に繋がるという結論が出ました。

こうして「スーパーマニアック」が、NASUメディアの記事作成におけるコンセプトに決まりました。例えば僕の場合なら「トイチック」。おもちゃのような、カラフルでポップなデザインに強く惹かれるんです。僕もトイチックについて、スーパーマニアックな記事を書いてみようと思います。書いてバズりたい!

NASUへご依頼いただいたデザインの解説記事は引き続き作成します。それに加えて、来年からは、NASU社員が執筆する記事も更新していきますのでお楽しみに!少し先になりますが、僕たちのスーパーマニアックなデザインの話を読んでいただけると嬉しいです。


コンセプトワークから生まれる、唯一無二のコンテンツデザイン

今回はNASUメディアをモデルに、コンセプトワークの様子をお届けしました。NASUが手がけるデザインは、こんなコンセプトワークをおこなっています。グラフィックデザインにおいても、コミュニティデザインおいても、コンセプトが何より重要だと考えているからです。

企画のコンセプトが決まらない、企業のコンセプトを見直したいと考えていらっしゃるならば、まずはご相談だけでもお待ちしております。

今なら1件(2021年11月)のみ、コンセプトワークのご依頼を受け付け中です。
(案件の内容や熱意で審査させていただきます)



〈 企画・文=成澤綾子(@ayk_031)/編集=浜田綾(@hamadaaya914)/バナーデザイン・画像制作=小野幸裕(@yuttan_dn52)〉