「CAMPFIREコミュニティの中でかけがえのない人や集合が中心となって、新しい何かが生まれるための枠を作り出したいと思っています。」そう語るのは、CAMPFIREコミュニティ事業部長の村田アルマさん。

2011年に創業した「CAMPFIRE」から生まれた「CAMPFIREコミュニティ」は、人と人とのつながりを大切にするアットホームなサービスです。

1つの都市を形成するためにパートナーとして、主にデザインの面で関わっている株式会社NASU。デザインの発注先にNASU選んでいる理由や、長年の経験によるノウハウを持つNASUならではの強みを教えていただきました。



既存のクラウドファンディングではなく
継続的なアーティスト支援を

─まず、2011年に創業した「CAMPFIRE」から「CAMPFIRE コミュニティ」が生まれた経緯を教えて下さい。

当時、民間のクラウドファンディング会社では、最大80日の掲載期間内に集めた金額が支援金額になる「オール・オア・ナッシング」と、1件でも支援が入ると資金調達が成功する「オールイン」という2つの種類がポピュラーだったんです。

僕がCAMPFIREに入社した2016年5月〜7月はクラウドファンディングの認知度は高くなく、利用者は右肩上がりに増えているタイミングでした。

そこで「オール・オア・ナッシング」と「オールイン」以外に、掲載日数に関わらず資金調達をしたい!という思いがきっかけで「CAMPFIRE ファンクラブ」がリリースされました。

今でいう「サブスクリプションモデル」を導入し、サービスで毎月集まった金額が翌月末日にオーナーに振り込まれます。最初はアーティスト、ミュージシャンの方のファンクラブとして交流していました。



クラウドファンディングの可能性を忘れられず、CAMPFIREに入社

───ファン同士の交流がないという意味で、現在のCAMPFIREとは違ったイメージですね。アルマさんがCAMPFIREに入社されたきっかけが気になります

僕は元々福岡でWeb制作会社でディレクターをしていて、デザイナー・コーダーの方と一緒にWebサイトやWebサービスを作るのがとても楽しかったんです。そこで九州で新規事業の立ち上げに関わり、「自社サービスを通じて、ユーザーや自分たちが目指す世界に進む」素晴らしさを感じました。

当時、国内のアニメカルチャーやサブカルチャーを海外に発信するクラウドファンディングを立ち上げました。サービスは上手くいかず1年でクローズして、会社を辞めてフリーランスをしていたんですが、そのときの気持ちとか、クラウドファンディングの可能性を忘れられなかったんですよ。

CAMPFIREは元々「ハイパーインターネッツ」という社名だったんですが、現代表の家入一真さんが戻ってきて、新たにメンバーを集めている2016年5月〜7月くらいに、家入さんから「東京においでよ」と声をかけられ、片道切符で東京に行きました。

いまCAMPFIREを支えているメンバーが集まるタイミングで入社できたので、活躍の場も多かったです。会社が成長していく過程で、素晴しいエンジニア・ディレクターの方々と切磋琢磨し、それぞれが責任の範囲で頑張ってくださっていて、それを支える気持ちが強かったです。

とても恵まれた環境でした。もし他のクラウドファンディング会社に入社していたら、今ある継続型のファンクラブやCAMPFIREのイベントは生まれてなかったんじゃないかなと思っています。



これからはコミュニティを幾つも「持ち歩く」スタイル

―――コロナ渦でリモートワークが増えて、コミュニティ機能を追加するプラットフォームが増えていますが、その中でCAMPFIRコミュニティが大切にしていることはありますか?

CAMPFIREコミュニティでは「資金調達を民主化し、世界中の誰しもが声を上げられる世の中を作れる」ために、声を上げる人や、人の気持ちを大切にしています。ただサービスを使ってもらうだけではなく「使ってもらうユーザーの魅力に気づいた方がファン・支援者になる」ことを常に考えています。

ただ利用者・支援者数を増やすだけではなく、CAMPFIREコミュニティの中でかけがえのない人や集合が中心となって、新しい何かが生まれるための枠を作り出したいと思っています。



───CAMPFIREサイトの「真ん中に灯っている火に人が集まってくる」ロゴからも、家族みたいなアットホームで温かい雰囲気を感じました。

そうですね。
いまはコロナの状況で対面はできないですが、クイズ、クイズ、ヨガ、映像制作、音楽制作など、ユーザーがこれまで培ったスキル・見てきた景色をシェアして、オンラインで学びを得られる機会を作られているのは、CAMPFIREコミュニティの強みだと思います。



───今はコロナ堝で移動に制限がありますが、インターネットを通じて場所・時間などの制限がなく人と人が繋がれる場所づくりをされている様子がよくわかりました。

コロナの前は、コミュニティに1つだけ所属する感覚だったと思うんですけど、コロナが日常・当たり前になってきていて、コミュニティに何個も所属して「持ち歩く」ことがポピュラーになってきているなと思ってます。

例えば僕のお小遣いが月1万円だとして、昔は1万円で1つのコミュニティに属するのがポピュラーだったんですよ。でも最近だと「ちょっといろんなコミュニティに入ってみよう」と思うような環境が育ってきていて、コミュニティにいくつも入る人が増えてきてますね。


コミュニティ運営に集中できるようデザインをシンプルに

―───CAMPFIREとデザインについて教えて下さい。今はデザイナーさんが福岡オフィスで活動しておられるとお聞きしましたが、デザインは全て同じ方に依頼しておられるんですか?

興味深い質問ですね。結論としては、そうです。

CAMPFIREコミュニティのデザインには、オンラインサロン・サブスクリプション・クラウドファンディングなど色々なタイプがあるんです。そのなかで、システムの仕様やCAMPFIREについて知って、デザインを考えたり進化させたりするには学習コスト・コミュニケーションコストがかかります。

それで、Webディレクター時代に福岡で一緒に働いていたデザイナーさんに声をかけ、サービスを引っ張りながらカルチャーをリードする「デザインリード」として頑張ってもらっています。東京から離れた福岡という土地で活動することで、東京の流れに惑わされず開発に集中する環境が作れています。

―日本では、デザインに重きを置く企業があまり多くないと思うんですが、CAMPFIREさんはデザインを重視しておられるイメージがあります。会社として、デザイン面でのこだわりはありますか?

CAMPFIERコミュニティでは、サイト内の表現をシンプルにしたり、言い換えたりすることで、ユーザーがコミュニティ運営に集中できるようにしています。例えば、クラウドファンディングでは「パトロン」と呼んでいたものを「支援者」にしたり、「リターン」と呼んでいたものを「メンバー特典」に変更したりしました。

機能・ページ表記など、これまで作り込んでいたものを時代を客観的に見ながら、説明しすぎないシンプルな形にしています。引き算をすることでタイトルや写真に目が行ったり、プロジェクトページの本文に注目を集められます。

そういった意味でも、デザインに投資する意味があると思っています。

「コミュニティ運営の一番の魅力」はオーナーと支援者とのコミュニケーションの輝かしさなので、そのために入り口を精錬しています。今はLTV(ライフタイムバリュー)などの戦略的なものよりも、サービスの魅力を見つめ直して、より親しみのある使われ方を目指しています


「コミュニティの楽しさや豊かさ、かけがえのない出会いを連鎖」したい

───詳しく教えていただきありがとうございます。続いて、CAMPFIREコミュニティがNASUと協業関係になったきっかけをお聞かせ下さい。アルマさん視点の動きとか気持ちを知りたいです。

CAMPFIREでは、国内のコミュニティの中でハブの役割になる方が結構おられて、そういった形で協力してくださっている方を含めて、コミュニティの楽しさや豊かさ、かけがえのない出会いを上手く連鎖できないかなと思っていました。

浜田さんが当時、NASUに所属する前にお声掛けさせていただいたのが最初ですね。CAMPFIREコミュニティの可能性を広げるために話をすすめるなかで、NASU代表の前田さんもコミュニティ運営をしておられて、「なにか一緒にやっていけませんかね?」という話になりました。

2社がそれぞれリソースを割いてプロジェクトを進める「業務提携」ではなく、お互いがフラットな立場で一緒に作れる関係性や、ゼロから何かを始められるちょうどいい距離感が「協業」につながりました。

CAMPFIREとNASUのコミュニティ事業において協業しております。

CAMPFIREコミュニティは、都市というか街みたいなイメージを持っているんですが、その中でNASUさんはワイワイしている大阪のイメージがあります(笑)。1つの都市を形成するための豊かさがあって、そのなかでもNASUさんは、デザインの強力なパートナーです。


経験と引き出しの多さはNASUが選ばれる理由の1つ

───CAMPFIREコミュニティのコミュニティが一同に集うコミュフェスが2018年に続いて、2020年の11月27,28,29日に開催されることになり、そのロゴをNASUにご依頼いただくことになりました。その経緯を教えてください。

NASUさんにご依頼・ご相談させていただいたのは、客観的に見た我々のイメージや世界観を表現して欲しかったからです。

ちゃんとヒアリングをしたり、提案書を作ったり。あと、エンドユーザーのために本当にこのメディアが必要かヒアリングしてくれます。その上で、SNSでも拡散してくださり届けるところまで一緒になって考えてもらえる。

これまで制作を積み重ねてきたから出てくる経験と引き出しの多さが、NASUさんが選ばれる理由の一つだと思っています。



CAMPFIREコミュニティが無い生活ってどんなのかよく考えます

最後に、CAMPFIREの今後の展望や、NASUさんと今後どう関わっていきたいかお聞かせください。

コロナの影響はもちろんあるんですが、事業設計者としては客観的な外部要因をを受け入れつつサービスを成長させていく立場にあります。そのなかで、CAMPFIREコミュニティが強く信じている2つのことがあります。

1つ目は「我々のサービスの良さと価値を知って頂きたい」ということと、2つ目は「メディアに対して。サービスを使ってくださっている人たちの活動をPRしたい」ということです。

最近は「CAMPFIREコミュニティがなかったら、どんな生活をしてたんだろう、どんなサービスを使っていたんだろう」ってよく考えます。Webサービスを成長させる上で、新しい人にリーチしつつ、既存ユーザーが「使ってよかった」と思える機会を作ることが大切なんですよね。

例えば、無理な機能追加をしたりするのではなく、自分たちが信じている人たちにちゃんと正しくリーチをして、自分たちを選んでくださってる方と一緒に次のステージに成長させていきたいなっていう気持ちはとても強いです。

お金の民主化の中で、CAMPFIREコミュニティを通じて人と人との繋がりを生み出すことに携われているのは光栄なことので、引き続き自分の世界観も含めてやっていきたいです。

NASUさんとの今後としては、お互いを成長させるために色々と準備をしています。

今後「コロナでこんなコミュニティが出きてきたんだ」みたいな発見もあるし、コミュニティの形が変わってきた中で、それを表現するデザインも変わってくるし、デザインによって与える印象が変わるので、正直終わりがありません。

そのなかで協業という形で、CAMPFIREコミュニティ・NASUがそれぞれの最適解を出していくというのは、ありがたいですし、パートナーとしてご一緒させていただきたいです。今月27日からのCAMPFIREコミュニティフェスティバル、#コミュフェス でも、ロゴにはじまり、NASUさんが運営される前田デザイン室のみなさまと共に作り上げていきます。




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CAMPFIRE COMMUNITY FESTIVAL #コミュフェス は、いよいよ明日11月27日から3日間開催です。チケットはこちらからお申し込みください。どなたでも無料でご参加いただけます。

#コミュフェス では、NASUが主宰するコミュニティ「前田デザイン室」メンバーが、27日のイベント運営をサポートします。また、28日20時からは、前田デザイン室の登壇があります。そして、このイベントに向けて、前田デザイン室メンバーで作った、 #コミュフェス の番組表バナーとWEBサイトも制作しました。


〈取材・文=益田翼(@tsubasa_jw)/撮影=森川亮太@Morley_CGentle)〉