GOOD AID株式会社(以下「GOOD AID社」)が展開する「おだいじに薬局」は、零売(れいばい)という新しい仕組みを用いたスタイルの薬局です。前編では、GOOD AID社の事業内容や、デザインをNASUに依頼いただいた経緯について代表の服部さんを中心に話を伺いました。

今回は、おだいじに薬局とGOOD AID社のロゴデザインの制作過程についての記事です。


子どもが「お!」と声を上げるロゴ

───最初にご依頼いただいたのが「おだいじに薬局」のロゴ制作でした。

服部:もともと調剤と零売の機能を併せ持つ店舗はあったのですが、統一したブランドイメージでの展開が十分にできていませんでした。これから多店舗展開を加速していくことを見据え、「おだいじに薬局」としてのブランディングが必要だと判断し、ロゴをつくることにしました。

前田:問い合わせフォームから連絡いただいたのが2020年5月。最初は僕がヒアリングをさせてもらいました。ちょうどNASUに新しい仲間として水上さんが加わったときだったので、その後のアイデア出しからは二人で進めました。服部さんの目指すことが極めて明確だったので、次から次へアイデアが出てきました。

水上:そうでしたね。最初のうちは自由にアイデアを出し、用途を鑑みながら少しずつ厳選していきました。店舗のサイン、薬を入れる袋、薬剤師の皆さんのユニフォームや名刺など、多岐にわたる用途を想定し、実際に当てはめてみながら検証していきました。

これが第1回目の資料になります。

5つの案を基本としながら、サインを切り口にした8案をお持ちしました。


水上:「おだいじに薬局」は新しさに加えて、温かみがあることに着目しました。思いやりを感じるネーミングですし、薬剤師さんが親身に相談に乗ってくれるのが特長でもあります。なので、ロゴ案はそれぞれテーマを持たせつつ、「あたらしく、あたたかくする」という軸で考えました。

服部:ヒアリングのときは、とりとめも無い思いをお伝えしただけなのに、初回から素晴らしい提案をいただいたことに感銘を覚えました。ただ、正直に言うと、初めて見たときから私の心は決まっていたんです。

前田:服部さんは、初見のときから“お”の案が好みだと仰っていましたね。

服部:はい。圧倒的なインパクトがある“お”案で決まりだと直感したのですが、こんなに早く決めていいものなのか、かえって不安になってしまって(笑)。もっと具体的にイメージを膨らませるためにブラッシュアップをお願いしました。

水上:2回目のご提案では“お”が、どのように使われるかの検証に重きを置きました。特に、看板は存在感があるので、見栄えを保ちつつ、きちんと街の景観と共存できるかは意識しました。


前田:僕は、看板を見た子どもが「おっ!」と声に出すシーンが目に浮かんだんです。“お”案には親しみがあり、「おだいじに薬局」にも合っているんじゃないかなと思いました。

水上:最終的に決まったロゴは11月にオープンした「おだいじに薬局 開明店」でお披露目されました。2回目のご提案以降、書体や文字の丸みなどは微調整しましたが、初回の提案からは大きく変わっていませんね。

2020年11月1日にオープンした「おだいじに薬局 開明店」

服部:先日、初めてお会いした方にこのロゴを説明したところ、「街中にあっても目立っていいですね」、「二度見したくなります」と嬉しい声をいただきました。個人的には、2回目の提案で印象に残っていることがあるんです。“おぉ〜”という言葉が『クレヨンしんちゃん』の口癖なので、いつかコラボしましょうというご提案。このロゴならではのアイデアだなと思って心に留めてあります。「おだいじに薬局」がもっと広まった暁には本当に実現したいと思っています。



最後は “ありたい姿”で選ぶ


───「おだいじに薬局」に続いて、コーポレートロゴの制作もご依頼いただきました。

前田:以前からコーポレートサイトにはこだわりが感じられ、イメージビジュアルもありました。ただ、僕個人としては、GOOD AID社が目指す姿を十分に表現できていない印象を持っていました。コーポレートロゴは会社の顔。自社の“ありたい姿”を明示することが大切です。ロゴのデザインにあたり、指針を言葉にもする必要があると思い、ミッション・ビジョン・バリューを策定していただきましたね。

服部:はい。これからビジネスを拡大・成長させていくにあたり、共通の言葉が必要であったのは確かです。ちょうど2020年は、社外取締役を含めて5名の経営体制となり、会社組織として新たなスタートを切ったタイミングということもあり、タイムリーなご提案でした。

GOOD AID社 コーポレートサイトより


前田:初回のご提案では、これを踏まえて、どうビジュアルに翻訳するかを考えていきました。実際の提案書も、僕たちがミッション・ビジョン・バリューを捉え、ロゴに落とし込むかという構成になっています。

水上:キーワードとして、「well-being」・「創り続け」・「変え続ける」・「ヘルスケアプラットフォーム」は特に意識し、造形としての意味も持たせたデザイン案を作成しました。それと、私たちからプラスアルファとして、タグラインを加えるアイデアをご提案しました。その言葉が「Always with you」です。

GOOD AID社コーポレートロゴのご提案書の一部(1回目)


前田:初回のご提案は8案あり、どれもミッション・ビジョン・バリューに基づいています。それがかえって決め手に欠けるんじゃないかという懸念があったんです。なので、言わば「言葉の印ろう」としてタグラインがあると機能するんじゃないかなと思いました。

服部:「ニュー・ノーマル」のようなキャッチーな言葉を使う手法もあったと思いますが、「Always with you」には普遍性があります。時代を問わず、常にそばにいる姿勢が、当社の目指す姿にもマッチしていて、しっくり来ましたね。

水上:2回目のご提案では、すべての案にタグラインを入れて、追加で8パターンをご提案しました。ただ、造形にフォーカスすると、個人の好みに寄ってしまう懸念もあったので、GOOD AID社らしさを軸に検討いただきました。

GOOD AID社コーポレートロゴのご提案書の一部(2回目)


前田:今回のご提案では、デザイン案はすべて水上さんに作成してもらい、僕はディレクションに徹していました。実は、この体制で臨むのはNASUとしても初めてでした。僕はデザイナーとお客様の間に立ち、客観的な目線での判断として、初回にご提案した太陽の案を推しました。GOOD AID社が“ありたい姿”を最も表現できているデザインだと感じたからです。

服部:当初、私たちは見た目で選ぼうとしていた節があったなかで、前田さんがこう言ってくださったんです。「どの案も皆さんが大切にする価値観や思いに基づいたデザインです。そのうえでロゴに込めた意味、らしさも含めて、GOOD AID社の“ありたい姿”に照らして考えると、太陽の案が一番腹に落ちると思います」。この言葉に当社側の全員が納得したんですよね。あとは私たちがミッション・ビジョン・バリューを貫き続ければロゴに納得感が生まれる。前田さんのあの言葉に、デザインのプロとして本質を見抜く力を感じました。

水上:3回目のご提案では太陽の案にタグラインを付け、書体、色、グラデーション、タグラインの位置などを検証した結果として一つのオススメ案をご提案しました。社内での検証も含めると200パターン以上はつくりました。形状から太陽であることは分かるので、あえて色味は赤・オレンジ系は避けました。代わりに、平和や健康を想起させ、安心感もある緑を基調としています。

GOOD AID社コーポレートロゴのご提案書の一部(3回目)


前田:調べた限りでは、太陽をモチーフに、こういう緑色の使い方をしている医療系の会社は他にありませんでした。その点でもGOOD AID社ならではのロゴと言えます。

服部:この色味がヘルスケアのイメージにぴったりでした。このロゴのイメージに合わせて、今年1月にはNASUさんにコーポレートサイトも刷新していただきました。サイトを開くと、GOOD AIDロゴのOの部分が日の出のように動き、私たちがロゴに込めた思いも感じられます。そのモーションが終わるとトップページには「Always with you」。グラデーションがかかった緑色も当社のコーポレートカラーとして定着してきています。

GOOD AID社コーポレートサイト:https://good-aid.com/

───今後のNASUに期待することをお聞かせいただけますか。

服部:「おだいじに薬局」のロゴも、コーポレートロゴも、何十年と使い続けられる普遍性を持ったデザインに仕上げていただきました。これで終わりではなく、NASUの皆さんが当社のパートナーであることに変わりはありません。これからも当社が目指す未来を実現するために、末永くデザインのプロとして力を貸していただきたいと思っています。

前田:もちろんです。よろしくお願いします!






GOOD AID社は、JR東日本スタートアップ株式会社と資本業務提携されました。NASUは、これからもデザインのパートナーとして「勝てるデザイン」をお届けします。

〈文=木村涼 (@riokimakbn)/ 取材・編集=浜田綾(@hamadaaya914)/ 撮影=前田高志(@DESIGN_NASU)〉