2021年──代表前田さんの書籍『勝てるデザイン』発刊に端を発し、売り上げも順調に伸び、社員も増え、空前の“勝てるイヤー”となったNASU。その影で、密かに進行し続けたあるプロジェクトがありました。


それが、「勝てるオフィスプロジェクト」。


“デザインとは、ある目的を達成するために、選択肢を増やして、その中から最適なものを選ぶ行為である” ──『勝てるデザイン』より

また、前田さんはこうも言います。「自社オフィスをデザインできなければ、クライアントの課題解決なんてできるはずがない」


インテリアや備品をどう選ぶか、また、それぞれをどう配置するか。オフィスは、デザインの集合体によってできていると言っても過言ではありません。NASUのオフィスでは、“遊び心”を感じられ、かつ働きやすい環境づくりを目指し、1年を通じてプチリニューアルを重ねてきました。

NASUは、オフィスで何を成すのか?

今日はNASUの広報の浜田が、この記事を読んでくださっているあなたをNASUオフィスにご案内します。


思わず笑顔になる「NASUの茄子」

株式会社NASUの本社は、大阪にあります。地下鉄「なんば」駅5番出口から徒歩約5分。エディオンアリーナ大阪を左手に見ながら、1Fの「T4 Cafe」がNASUのオフィスが入るビル「T4 BUILDING OSAKA」の目印です。

エレベーターで6階に上がると、入り口があります。


中に入ると、NASUメンバーが仕事をしています。


今年のオフィスデザインでも、特にこだわったポイントの一つが、こちら。


NASUのロゴ型茄子オブジェです!

このオブジェは、「お客様が来たときに写真を撮れる場所が欲しいよね」というところから構想が始まりました。

壁にロゴマークのパネル貼るのもいいけれど、もっとユニークな何かが欲しいなぁと。そんな話をしているときに前田さんから『赤ちゃんみたいに抱っこできるサイズの茄子をつくろう』っていうアイデアが出たんです。社員全員が「これだ!」ってなりました。

お客さんが来て、写真を撮るときは、こんな風に茄子を抱っこしてもらっています。写真を撮る時って緊張しがちですが、あまり存在しないオブジェですし、しかも抱っこしてくださいとこちらがオーダーするのでみなさん自然と笑顔になります。そういう意味でもこのオブジェは価値があります。

ただ、このオブジェ、制作が大変でした。こういう特殊な形状をしたオブジェを作れる会社を探していいたのですが、前田デザイン室(前田さん主宰のオンラインコミュニティ)のメンバーで作れる人がいたので、お仕事として制作や塗装を依頼しました。

ただ置いておくだけではなく、抱っこできる重さでないといけないので、木で作ってもらいました。世界で一つしかない、NASUオブジェです。

ちなみに茄子のへた(というか蓋)を開けると、中にはお菓子が入っているんですよ。


見られることで、選ぶものも変わる

茄子のオブジェの横には、大きな木を置いています。幹は、本物の木です。これはシンボルツリー、茄子の木です。さすがに、本物の茄子はこんな木ではありませんが、茄子の造花を吊り下げています。

季節ごとに装飾もしていて、つい最近まではクリスマスツリーになっていました。こぼれ話としては、この木が大きすぎて、エレベーターに乗せることができず、社員数名で6階まで階段で木を持ってきて設置したんです。


オフィスの中には、他にも多くの緑、茄子で彩られ、その装飾は天井にも行き渡っています。

そうそう、天井の飾り付けをする際に梯子が必要になりました。単なる作業のためと考えるなら、なんでもよかったのですが、その場合、使わないときは見えないように収納しないといけません。それならば、出しておいてもおしゃれな梯子を探そうということになり、この梯子を選びました。

狙い通りで、緑の木の横に置くとアクセントになっています

NASUnewsで毎月オフィスを撮影したり、茄子オブジェを持ってお客さんの写真を撮るということは、つまり見られることを意味します。それに写真を撮ると、収納が綺麗じゃなかったり、配線が気になるんですよね。

つまり、人の目に触れたり、自分たちで客観視することでオフィスに置くものが変わるし、環境をよくしようと思える。これもデザインだよなと日々感じています。

細かなツッコミどころがお客様との会話のきっかけに

来客といえば、オフィスに来訪されたお客様には、ペットボトルのお水を出しています。よく見ると、文字が書いてあります。


「DESIGN DE NASU」

デザインで成す。NASUの屋号に込められた想いです。

以前は、お客さんには普通に紙コップにお茶を入れたものをお出ししていました。でもそうなると、紙コップが気になるんですよ。使い捨てとはいえ、いいものを選びたいよねと。じゃあ、紙コップをやめてガラスのコップにする? などと議論しているときに、オリジナルラベルの水を作ろという話になりました。

初めて行くオフィスって誰しも緊張しますよね。でも、ツッコミどころがあると、話もしやすくなると思うんです。弊社の場合、茄子に絡めた話から始まって『何だか面白いことをしてくれそうな会社だな』って思ってもらえたら、それがアイスブレークであり、会社の紹介になると考えています。

モノと配置で社内のコミュニケーションもデザインする


ここまで様々な形で「茄子」を連呼してきましたが、実はここまで本物の茄子は登場していないことに、お気づきだったでしょうか。

残念ながら本物はない……と思いきや、きちんとあります。

NASUの創立記念日に植えられた本物の茄子です。夏に収穫しています。

栽培場所はオフィスから出られるテラス。このテラスも緑の芝生が一面に広がり、気持ちが良い空間になっています。

この事務所に移転することを決めたのは、この広いバルコニーもポイントでした。それなのに有効活用ができていなくて、今年ようやく着手できました。バルコニーには、一面に人工芝を敷いたています。こういう場所があると、社員同士で、ピクニック感覚でお昼を一緒に食べたりもできますからね。

弊社は、社内のコミュニケーションを大事にしているんです。人数が多いわけではないので、悩みを抱えたりせず、話し合えるようでありたいからです。茄子の栽培も芝生もそうで、気軽な会話につながるきっかけは意識的に作ろうとしています。

社員のため、という仕掛けは別の場所にも。

一見、普通の本棚に見えますが、下段は社員のロッカーになっています。本棚とロッカー、一緒にしたら整理整頓しやすいのかもという想像はできますが、それだけに止まらないデザインがここには詰まっています。

本棚は元々、入口あたりに置いていたんですが、年々本が増えるし、取りに行きにくくてですね。社員も増えて荷物の置き場もなくなってきたので、それならとロッカーと一体化できる本棚を買うことにしたんです。USMハラーというスイスの家具メーカーで、色も機能もカスタマイズできます。

サイズも、この場所にぴったり合うようにしてもらいました。奮発したんですけど、そのぶんめちゃくちゃ良いです。毎日使うロッカーと一緒になったことで、本を手に取る機会が増えました。本も増え続けているので、自己研鑽にも役立ててもらいやすくなったと思います。

ちなみに、執務エリア以外にはこんなものも。

そう、バーカウンターです。最大5名までの超限定席になっています。隣の部屋も借りているので、カウンターは以前はその部屋に置いていました。だから、前田デザイン室やNASUのイベントの時にしか活用できてなくて。人を呼びたくても、このバーカウンターを導入した時期はコロナ真っ只中だったので。

でも、これも行動のデザインで解決しました。

じゃん。メインのオフィスにバーカンターを持ってきたんですこれでいろんな問題が解決しました。このカウンターの後ろにはソファーとローテーブルがありますが、やや手狭なので来客用といいつつ、活かしきれていませんでした。

でもこの位置にカウンターを持ってくることで、お客さんはここで対応するという導線が生まれました。それから、以前のレイアウトだと入口付近がガラ空きなので、エントランス感がありませんでした。このカンターを置いてから、宅配便の方もこの前で止まってくれます。時には、ここで社員がランチを食べることもあります。

こうして、置く場所を変えることでバーカウンターをフル活用することができました。


ちなみにこのバーカウンターもオーダーメイドなんです。先に、食器を入れる水屋箪笥をつくっていただいて、それが良かったので同じところに依頼しました。

NASUのオフィス案内もこれにて終了です。

エレベーターを出て、広がったオフィス空間。何気なく見える一つひとつのモノにも目的・意味があり、機能を果たしています。それはつまり、人の意識や行動に影響を与えているということです。

自社オフィスをデザインできなければ、クライアントの課題解決なんてできるはずがない。

この1年のオフィスデザインを通して、考えていることを前田さんに聞きました。

お客様にも社員にも、笑顔になってもらいたいという思いはありますね。社員にとっては、社内の風通しが良く、働きがいがある場所。お客様にとっては、ただ仕事の話をするだけじゃなくて、単純に面白がって、楽しんでもらえる場所。そのためにモノも揃えるし、置き場所も考えます。

モノが変わると、人の行動が変わる。オフィスのデザインは、行動のデザインとも言えます。だから、『勝てるデザイン』を掲げるデザイン会社として、ここも『勝てるオフィス』でありたいんです

逆に言えば、自分たちのオフィス・働き方がデザインできなければ、クライアントの課題解決もできないですからね。オフィスという最も身近な課題に対して改善を重ねることは、NASUのスタンスやデザインの力を示す証でもあるんです。これからも社員みんなと相談しながら、もっともっと進化させていきたいなと思ってます


「勝てるオフィスプロジェクト」に終わりはありません。オフィス移転の可能性もある!?







〈文=木村涼 (@riokimakbn)/編集=浜田綾(@hamadaaya914)/バナーデザイン=久本晴佳(@hi_sa_ko__)/ 写真レタッチ=小野幸裕(@yuttan_dn52)〉