レディオブック株式会社がプロデュースする会員制パフェバー「Remake easy(リメークイージー)」が、2021年11月15日にリニューアルオープンしました。ロゴをはじめ、Webサイト、会員カード、名刺、コースターなどのデザインをNASUが手がけています。

Remake easyは、クラウドファンディングで販売した会員権が即日完売。華やかで美しいパフェや秘密の隠れ家をイメージした内装が、オープン当初からSNSを中心に話題になりました。人気も高く、成功していると言っていいお店でしたが「コンセプトが完璧に具現化されていない」と感じ、今回のリニューアルを決断されたそうです。

この記事では、生まれ変わった店内の様子をお伝えするとともに、NASUでデザインしたものがどのような意図で制作されたかについて解説します。

大人の秘密基地へ潜入

Remake easyは完全会員制で、住所非公開。Webサイトからは「店内が薄暗そう」「パフェが美味しそう」くらいの情報しか得られず、ドキドキしながら向かいました。

お店が入っているのは都内某所のとあるビルです。目的の階でエレベーターの扉が開いた瞬間、無機質なコンクリートの壁を飾るロゴが目に飛び込んできました。


ロゴには店名以外の情報は一切ありません。禁酒法時代の隠れ家バー「スピークイージー」を彷彿とさせる世界観を表現しています。ロゴをデザインしたのはNASU代表の前田高志さん。

デザインのコンセプトは「知っている人だけが知っている、秘密の隠れ家」です。


Remake easyはスマホを修理する時間に、美味しいパフェをいただいて有意義に過ごすための場所です。「R」の文字の中にあるドットは、スマホを表現しています。

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Rのフォルムでこだわった点は、クオリティの高い書体です。どんなサイズで使っても歪にならない、美しい形を追求しました。ロゴが少しハードな印象なので「Remake easy」の文字はガーリーな雰囲気を感じられるようにしています。また、読みやすくするために文字を崩しすぎない配慮をしました。

造形的な美しさと歴史的な美しさが融合された、モダンクラシックなデザインだと感じました。スタイリッシュだけど可愛くて、ラグジュアリーな雰囲気も漂います。

コンセプトは「現実と空夢の狭間世界」

さあ、いよいよ店内へ潜入します。

扉を開けると、外観からは想像もつかない空間が待ち構えていました。チャコールグレーを基調としたシックな雰囲気に、カウンター奥のブロンズの壁面が印象的。思っていたよりも店内は明るく、入りづらさは感じません。

内装のコンセプトは「現実と空夢の狭間世界」です。今回のリニューアルは一から再構築するためではなく、オープン当初から思い描いていたRemake easyの世界観に、より近づけるためにおこなわれました。スピークイージーの時代的な情緒と現代の新しい文化、高級感が融合した温故知新の世界観です。

リニューアルで大きく変わった点はふたつあります。まずは壁を埋めて窓を塞いだ点です。以前は窓から外の景色が目に入ってしまい、没入感を妨げていました。窓がなくなった店内は、まるで地下室のようです。秘密の隠れ家にふさわしい内装になりました。

窓を塞いで、さらに隠れ家らしくなりましたが、不思議と閉塞感は感じません。その理由はブロンズの壁面が照明を反射しているから。

Remake easyをオープンする以前に、内装のコンセプトについて、レディオブック株式会社CEOのYUGOさんと話をしました。その際、イタリアで訪問した地元の人気店から着想を得て「真鍮とサイバーパンクな世界観をRemake easyに採用したい」と提案していたんです。今回のリニューアルでブロンズの壁面を採用したことにより、その世界観が具現化しています。


YUGOさんに、ブロンズの壁面を採用した理由を聞いてみました。

人類が初めて見つけた鉱石が、銅だと言われています。これは、古いものと新しいものが融合するRemake easyにふさわしいと考えました。


ゆったりとした空気が流れる店内にいると、時の流れが止まっているような感覚を覚えます。

窓を塞ぎ、ブロンズの壁面を設置するリニューアルによってコンセプトが具現化し、「Remake easyの世界観」が完璧に確立しました。カウンターにある長方形のカバーは、外すとスマートフォンの充電ができる設計になっています。

世界観をデザインする

出迎えてくださったスタッフの方の名刺にもロゴがあしらわれていました。デザインを担当したのは、NASUアシスタントデザイナーの小野幸裕さんです。

ブロンズの壁面を連想させるべく、ロゴの「R」には少し赤みがかったゴールドを採用しました。


高級感と特別感のある名刺です。ただ名刺を交換しただけなのに、もらった自分まで特別な存在に感じられる素敵な体験ができました。

高級感と気品を感じられるように、ロゴのサイズにも徹底的にこだわっています。店内でロゴが使用されているグッズが他にもあるため、Remake easyの世界観を壊さないように統一感を意識してデザインしました。他のグッズはロゴだけを使用しているので、名刺も表はロゴのみにして裏面に情報を記載しています。


席に着いて、パフェを選ぼうとメニューブックを手に取りました。おしゃれでかっこいいデザインに、開く前から期待感が高まります。デザインを担当したのは、NASUデザイナーの水上肇子さんです。

バーでもよく使われている、スリムでスタイリッシュな形を採用しました。狭いスペースでもスマートにメニューを選べます。


Remake easyは月替わりの新メニューがあるので、メニューを交換しやすい留め具を使用しているそうです。ヴィジュアルと実用性を兼ね備えたデザインは機能美に溢れています。

留め具の材質を工具のシルエットの真鍮板(銅と亜鉛との合金)にして、スマホ修理を連想させる工夫を施しました。隠しメニューが見られる仕掛けもあります!

ブラック×ゴールドを基調に、品のあるサイズ感のロゴが配置され「Remake easyらしさ」が見事に表現されていました。

食感の動線までもデザイン

「夜にパフェを食べるなんて、太ってしまいそう…」と躊躇うかもしれませんが、Remake easyのパフェを目の前にしたら、きっとそんな気持ちは吹き飛びます。美しさと美味しさを兼ね備えた、至高の背徳感を味わえる逸品です。ヴィジュアルのデザインだけでなく、食感の動線までもデザインされています。


今回いただいた「キャラメルショコラとバナナのパフェ」の場合は、ほろ苦さを感じるトップを飾るカカオ70%のオーガニックチョコレートからはじまり、アーモンドの生地、バナナ、ビターチョコのムースからアイスへとなめらかな食感が口に広がります。そして、ビターチョコのサブレパーツ、アーモンドの生地のサクサクした層が続き、キャラメリゼしてラム酒でフランベしたバナナへと繋がります。

味わい深い、大人のための上質なパフェでありながら、最後の一口まで美味しく食べるための工夫が随所に凝らされています。パフェを食べて感動したのは、初めての経験でした。


リニューアルにあたり、国内トップクラスのパティシエである林 巨樹さんがパフェを監修しています。パフェの語源はフランス語の「パルフェ」、英語にすると「パーフェクト」です。林さんは「美味しいのはもちろん、パフェに入っているものがすべて完全体でなくてはパフェとは呼べない」と考え、食材はもちろん、食材の入手経路にまで徹底的にこだわっています。


先ほどご紹介した「キャラメルショコラとバナナのパフェ」に使用するオーガニックチョコレートやカカオニブは、フェアトレードで輸入されたものです。フェアトレードは直訳すると「公正な貿易」になります。途上国で生産された品が、先進国によって安価で買い叩かれる事態を防ぎ、生産者の利益を保障するための仕組みです。

また、使用される小麦粉は国産にこだわり、国内消費に貢献するとともに輸入過程で発生するCO2の削減にも配慮しています。生産者、食べる人、食べる空間、そのすべてが完璧な状態になって初めて、林さんの考える「完璧なパフェ」が完成します。

<林 巨樹さんプロフィール>
株式会社Bross代表。飲食業界のイノベーションを目指す若手実業家。2015年に「エコール 辻 東京」を卒業後に渡仏し、パティシエとして修業。帰国後「クラブ ハリエ」に入社し、都内のフランス菓子専門店に勤務。2018年のパティシエコンクールで国内3位の実績を持つ。クラブハリエ退社後は食に関するフリーランスとして活動し、2020年10月に株式会社Brossを設立。食のプロの新たな働き方の提案・改善するリアルプラットフォームづくりをおこなっている。

珠玉のペアリングを支えるデザイン

Remake easyを語るうえで外せないのが、パフェとアルコールのペアリング。「キャラメルショコラとバナナのパフェ」に合わせるのは、アイリッシュウイスキーをベースにコーヒー・砂糖・生クリームを加えた「アイリッシュ・コーヒー」です。

アイリッシュウイスキーの少しとがったクセのある味わいと、コーヒーのほろ苦いコク、生クリームのなめらかさが絶妙に絡み合います。パフェに合わせていただくと味覚の奥行きが深まり、さっきまで「これ以上なく完璧だ」と思っていた味を優に超えてきました。他のパフェでもペアリング体験をしてみたいです…!


アイリッシュコーヒーが置かれたコースターにも、ロゴがあしらわれていました。基本的にブラックのコースターが使用されていますが、稀にゴールドのコースターが混じっています。デザインを担当したのは、メニューブックと同じく水上さんです。

台紙とロゴを異なる質感にして、ロゴの存在感を引き立たせています。紙製のコースターですが、Remake easyの世界観に馴染ませるために箔押し仕様で高級感を演出しました。

ブラックの台紙にブラックのロゴですが、洗練された華やかさを感じます。グラスを持ち上げてもくっつかず、置いても水滴がシミにならない材質なので、快適にペアリングを楽しめました。

進化し続ける大人の隠れ家

今回のリニューアルによって、Remake easyのコンセプトを実現する世界観が完成に近づきました。足を踏み入れた瞬間から、そこは「現実と空夢の狭間世界」です。現実社会のノイズがシャットアウトされた、特別な時間を過ごせる空間が広がっていました。

しかし、レディオブック株式会社のCEOであるYUGOさんは「まだ完成していない、もっと進化させたい」とおっしゃっています。以前の内装も好評であったにも関わらずリニューアルに踏み切り、さらなる高みを目指し続ける「完璧へのこだわり」に感銘を受けました。NASUもパートナー企業として、デザインの力で貢献できるように頑張ります!

Remake easyの新規会員の募集がおこなわれる際は、Remake easyのTwitterでお知らせがあります。次回の募集は未定ですが、気になる方は早めにフォローしておきましょう!





〈 取材・文=成澤綾子(@ayk_031)/編集=浜田綾(@hamadaaya914)/撮影=ただの ちひろ(@chihiro146)、佐藤顕子/バナーデザイン=小野幸裕(@yuttan_dn52)〉