嫌いだったはずのハートマークが、社員をひとつにするシンボルに ー株式会社フタバ工研 “改善の心”のデザインー

CHANGE BY DESIGN

3章 NASUでのデザイン経営事例とその結果

はじめに

「デザインをリニューアルしてから、社内の雰囲気が変わった。」

その変化が、数字にも現れている企業があります。その企業の名前は、静岡県浜松市で輸送機器の金属加工を行う、株式会社フタバ工研。

フタバ工研の課題として、世代交代による人手不足と先代の意思が薄れてしまうことへの懸念がありました。

長年勤めてきた熟練の作業員が数年後には定年を迎えてしまうため、若い人を集めたい。しかし、なかなか人が集まりにくい。加えて世代交代で、先代から受け継がれてきた「改善の心」の大事さが薄れてしまうことが懸念されていました。

そこで、NASUからの提案として、デザインのリニューアルだけではなく、創業から大切にしてきた改善の心を全面に打ち出した「改善チーム」を作ることが真の課題解決につながる、という意味を込めて「ONE HEART TEAM」というタグラインをご提案しました。

この「ONE HEART TEAM」のタグラインと企業顧問の方のアドバイスがきっかけで全従業員が参加し、会社の考えを話したり、社員同士が意見交換をする「ONE HEART MEETING」の定期開催が決まったそうです。

さらに、社内で新しい取り組みが始まり、その結果、製造過程での不良品の減少や機械の停止が減少するという目に見える変化があったのだとか。

デザインを変えることで何が変わったのか?

今回の「CHANGE BY DESIGN story」では、その軌跡をたどります。

CHANGE BY DESIGN storyとは?

デザインとは、かっこいい、おしゃれを作るだけではなく、
現状に変化を起こすためのもの
||
CHANGE BY DESIGN

「CHANGE BY DESIGN(デザインで変化を起こせ!)」は、私たちNASUがお客様に向けて掲げている約束、タグラインです。 クライアント様との対話を通して、どうすれば、デザインで変化を起こすことができるのか? を紐解きます。

対談する人

フタバ工研 代表取締役社長 藤田社長

株式会社NASU 代表取締役社長/クリエイティブディレクター 前田 高志

デザインで、変化が起きた。

——「デザインリニューアル後、社内の雰囲気が変わった」とお聞きしました。どんな変化があったのでしょうか?

藤田:デザインリニューアルの時にできた「ONE HEART TEAM」の言葉と企業顧問の柴戸さんの勧めもあり、「ONE HEART MEETING」という名前で、社員同士の意見交換をするミーティングを定期開催しています。

(「ONE HEART MEETING」の様子)

参加者は社員全員でない時もありますが、主要なメンバーを集めて、もう50回くらいやっています。

全体的に、コミュニケーションの向上や社内の雰囲気が良くなったと思いますね。顧問の柴戸さんが入ってくれてるおかげもあるんですけどね。

ミーティングがあることで、職場の問題点や困りごとは出やすくなった。いいことですよね。職場の風通しがだんだん良くなってきていると思いますよ。

前田:数字的な成果はあったんですか?

藤田:売上とかそういう意味ではまだですね。でも、グループの活動の中で生産不良が減ったり、機械が停止する回数が減ったりっていうのは、去年と今年ではだいぶ違うので数字的な結果と言えます。

前田:すごいじゃないですか。

藤田:すごいことですよ。不良回数をまとめている資料があるんですが、去年と今年で比べた時に、良くなってるものには丸がつくんですが、それがほぼ丸になったんです。

「次は何をやろう?」社員に広がる改善の心

——「ONE HEART TEAM」のタグラインが、社内にも浸透してきたということでしょうか。

藤田:徐々にではあるけど浸透してきているように思えますね。徐々にでいいんだよ。経験上、急激に変えちゃおうとすると歪みが発生するから。少しずつ、みんなが追いついていける範囲内で変わっていかないと、定着しない。染み込まないと思っているんで。

前田:なるほど。

藤田:だから、今はこれでいいんじゃないのかなと。

ONE HEART MEETINGに参加していない社員も、配布された議事録やアジェンダを読み、生産技術や物流担当者の宿題、各改善の手伝いを自ら行う人が出てきた。

そういうことから雰囲気が徐々に良くなっていくと思う。素晴らしいことですよ。

例えば切断グループでは、「ピッカピカ大作戦」という名前をつけて、定期的な機械の清掃活動を実施するようになった。その結果、職場内が整理されるという風に、「改善」が実際に実施されていってる。

(第一回目「ONE HEART MEETING」の様子)

最初にONE HEART MEETINGをしたときは、「何これ?」みたいな雰囲気がありました。最初はそんな感じだったのに、今は「次は何をやろう?」みたいな、そっちに向かっていますね。それはもう、すごい変化だと思います

前田:デザインリニューアルの際に、採用を一つの課題として相談していただいたと思うんですが、採用の方はどうですか?

藤田:デザインをお願いしたときは人手不足が課題で、ちょうど人が欲しい状況だったんです。

ところが、今は自動車業界の状況があんまりよくないんですよ。そこからガタンと落ちたってほどではないけれど、注文の量的にはちょっと落ち着いています。そういう状況なので、最近の採用ペースは抑えぎみになっています。

募集自体が少なくなれば、入りたいって人は多くなる。忙しくて、人が欲しい時にはなかなかうまくはいかないですよ。そこは、需要と供給ですね。

そんな中で、最近は経験のある方も応募してくれて、一人、入っていただけました。

ハートマークが嫌いだった。それでもこのロゴに決めた理由

——改めて、デザインリニューアルについても振り返っていきたいと思います。フタバ工研さんのプロジェクトでは、「プロスポーツチームのような改善チームを作る」のコンセプト、「ONE HEART TEAM」のタグラインを定め、その言葉を軸にロゴやWebサイトを制作しました。

藤田:デザインって、ホームページを作ったり、作っているのはその見た目とか形だと思っていたんですよ。でも、デザインリニューアルを通して、見た目がよくなることだけではなくて、経営にも影響があるんだと思いました。

ある計画書で見た言葉なんですけど、デザインという言葉にすることで、経営自体も良くなるみたいな。経営の判断軸の一つに、デザインの考え方があるんですね。

僕ね、正直言うけどハートマークって嫌いだったんですよ。ハートマークとか、あとなんかピンクの可愛い感じとか。でも、新しいロゴには「これがいい」って思えたんです。

やっぱり、デザインの経過を見せてもらって、それがすごく嬉しくて。マークに込められた意味があるんだってすごく伝わりました。

前田:社長がおっしゃったの、まさに大事なことだと思っていて。

お客さんによく言うんですけど、デザインを選ぶ時に、だいたいみんな「好きなもの」を選んでしまうそうじゃなくて、コンセプトで考えましょうというのをいつも言っています。

このロゴは、一見ハート型なんだけど、フタバの「フ」でもある。

(ロゴ提案時の資料より)

最初のインスピレーションはカタカナの「フ」だったんですよ。ハートじゃなくて。着想としてはそれと、上を向いている矢印のイメージ。

そこから、「これハートマークだ」って気づいて、このハートが生まれました。

藤田:僕自身もいいと思うし、やっぱりフタバに合ってるよね。

前田:そう言ってもらえるとめちゃくちゃ嬉しいですね。

藤田:プレゼンの時に、前田さんがそうやってコンセプトを説明してくれて。

前田さんがそこまで言うんだったら、やっぱり意味があるなと思ったのもあったし、あとはやっぱり、経過を知っていることが大きいですね。デザインの途中経過を見せてもらっているから、このロゴに固まるまでの流れをわかっているじゃないですか。

それだけたくさんの意味を、このシンプルなマーク一つに詰め込んであるってわかって、ああ、このデザインは意味があるなって思っちゃいました。

前田:嬉しいです。

藤田:「ロゴ変えよう」「制服変えよう」「クレドカード作ろう」って、それだけじゃないんですね。なにか大きなものが元にあって、そこから生えてくるものがそれぞれのデザインなんだと思いました。

前田:今回だと「プロスポーツチームのような改善チームを作る」というコンセプトが、全部のデザインの出発点になっています。

よく「北極星」と説明するんですよ。みんなが同じ方角に向いて進めるように、目印になるのがコンセプト。

藤田:僕も、最近社員に対して「道」って言い方をしてます。

みんなが同じ道をゴールに向かって歩いて、一つの道を作っていく。今までは道が分からないから、みんなバラバラで動いてしまっていたけど、道が同じだったらチームとして一つになって進んでいける。

「プロスポーツチームのような改善チーム」を作っていきましょう、この道を行きましょうと、いつも言っていますね。道の方が絶対ぶれなければ、ちょっとずつでも進んでいけるんで。

色々あるけれど、楽しんでやることが一番大事だと思っています。

(左から、NASUコピーライター浜田、NASUクリエイティブディレクター前田、フタバ工研 藤田社長、フタバ工研 藤田常務、フタバ工研 藤田品質管理室室長)

(フタバ工研のみなさま)


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〈 文=長谷川 遥花、浜田綾(@hamadaaya914)/ 編集=浜田綾 / 撮影=大崎俊典(photo scape CORNER.)、前田高志(@DESIGN_NASU)/ 画像レタッチ=長谷川 遥花、久本晴佳(@hi_sa_ko__)/ バナーデザイン=際 めぐみ、久本晴佳〉

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