※こちらのシールのデザイン、制作は現在受け付けておりません。


去る、2021年12月。2021年度NASUの一番のこだわりプロジェクトといっても過言ではない作品が完成した。まずは、とにかく見て欲しい。

これは、「ナッスリマン」シールです。ビックリマンシールと酷似していますが、ビックリマンシールではありません。ナッスリマンです。

パラレルワールドと考えてください。パクリとかいう次元ではなく完全なるリスペクトによるオマージュです。写真をよく見てください。イラストと裏面、そして、ナッスリマンは実家のひきだしの隅から発見されました。30年のシールの劣化まで印刷加工で再現しています。印刷だけで10万円かかりました。


こんにちは。株式会社NASUの代表/クリエイティブディレクターをしている前田高志といいます。


NASUでアルバイトをしている子の服がかっこよかったので同じのが欲しくなって、一緒に買いに行ってトータルコーディネートしたら、まさかの15万円もしました。

学生ってみんなこんなに服にお金をかけているの? でも、若々しくかっこよくなったので結果オーライとします。この服に猛烈にフェチを感じたんです。僕はそこに素直に生きていこうと決めています。

これからのクリエイターはフェチが大事だ。

「1万字ぐらい書けるくらい好きなことを持とう」という取り組みを弊社では行っております。コンテプトは「スーパーマニアック」。今回は僕のビックリマンシールへのマニアックなフェチ(印刷、イラスト、妄想)について書いていきます。


前田高志とビックリマンシール

僕の世代からすれば、ビックリマンシールは、青春であり、めちゃくちゃ懐かしいアイテム。テレビ番組『アメトーーク』で紹介されたり、最近だと『呪術廻戦』とコラボしてるから若い人も知っているかもしれない。ただそもそもビックリマンシールを知らない人もいるかもしれないので、説明します。


ビックリマンシールとは、ロッテのお菓子「ビックリマン」を買うとついてくるおまけのシールのこと。でも実際シールは、まったくおまけではなくメインだ。このシール目当てにお菓子が爆発的に売れた。当時の小学生は、ひたすら「ヘッド」と呼ばれるキラキラシールを求めて街中をさまよっていた。僕はやってないが、シールが欲しいがためにお菓子のウエハースを捨てる子どもがいたらしい。このチョコウエハースは今でも食べたくなるほど好きだ。ちなみに、のちにビックリマンアイスも販売された。公園に捨ててアイス屋のおじさんに怒られていた子どもを見たことがある。社会現象になっていた。


ご多分に漏れず、僕もビックリマンシールに夢中になっていた子どもの一人だった。ビックリマンシールは、少し遅くて第6弾から購入するようになった。シールはアルバムに入れて収集していたことを今でも覚えている。アルバムに入れて眺めることが快楽になっていた。そして、持っていないシールを埋めたくなっていくのである。人気がありすぎて1店につき1人2個しかビックリマンを買うことができなかった。だから、僕は街中のコンビニを行脚していた。一方で親が協力していたのか、箱買いしてもらってた友だちがいた。ずるい。当時、僕は彼らを心底妬んでいた。


僕が特に好きだったのは、ブラックゼウスとヘラクライスト。理由がかっこよすぎるからだ。パーツや武器が童心をくすぐる。ブラックゼウスは特に悲しい出生の物語があり、それがまたグッとくる。スーパーゼウスの天使のトップの双子の生き別れが悪魔になっている。ビックリマン史上はじめてのホログラムシール。いや、何かのインタビューで子供向けシールで日本初だっと読んだことがある。そんな未だかつて見たことがないシールに胸が熱くなったのを覚えている。ブラックゼウスはめちゃくちゃ描いてた。見えにくいホログラムシールを見ながら年賀状に。干支なんて関係ない。僕にとってはブラックゼウス年だった。そういえば、この年賀状に描いた絵を見た母が、褒めてくれた。めったに子どもを褒めないシャイな母なのに。


その後にヘラクライストが登場した。シールの背景のきらきらがあかと緑バージョンがある。ロボットなんだけど、機械のイラストの感じが好きだった。ナッスリマンはヘラクライストがベースになっている。


その後、アニメ『ビックリマン』の影響で、第6弾以前のキャラクターも好きになった。ヤマト王子と十字架天使だ。十字架天使は僕の初恋であった。その話はまた別途したい。


ちょうど4、5年前くらいだろうか。いやもっと前からか。このビックリマンシール風のシールを作る人が現れはじめた。今や割とスタンダード名刺として活用している人もよくある。僕も実際名刺交換の際にもらったことがある。印刷会社のサービスにまでなってる。どんな人やアニメ等とコラボをしても「ビックリマン」風になる、ブレないデザイン性。はじめてのコラボはキン肉マンだったかな。衝撃的だった。楽しかった子供の記憶を呼び覚ます。さらに独自の世界観を確立した、すてきなアイデアだ。


出始めのころこそ「うわ!めちゃくちゃ面白い」と思ったけれど、今やアプリなどで簡単に作れてしまうため、目新しさは薄れてしまっているところもあるのではないだろうか。それが少し寂しい。真のビックリマンファンとして、クリエイティブディレクターとして立ち上がろう。デザイン会社がビックリマン風シールを本気で作ってみたらどうなるか、実験してみたくなった。


制作期間は、実に半年以上。最初は「こんなことやったら面白いかな?」の思いつきから始めたのだけど、やり始めるとこだわりまくってしまった。ちなみにこの取り組みは仕事ではなく、イラストと印刷と紙のアート実験。なのに半年もかけてしまったのだ。どうしてくれる、大赤字じゃないか。そこで、この記事を書いた。この記事を通して、NASUの企画・イラスト・デザイン・印刷へのこだわりを知ってもらえたら本望だ。



「NASUらしさ」を大切にしたイラストづくり

肝となるイラストだが、今回はイラストレーターのみこまさんに描いてもらうことにした。彼女はいろんなタッチが描けてしまうカメレオンイラストレーターだ。前田デザイン室でも数々のカメレオンっぷりを見てきた。クオリティが本当に高い。

まずは、僕がみこまさんに本家「ビックリマン」シールのデータを送り、イラストイメージを伝えた。NASUがやるからには、NASUならではの独自性も織り込みたい! そこで「ビックリマン」らしさとともに「前田らしさ」にもこだわった。


こうして「ラフのラフ」である最初のイラストが、みこまさんからあがってきました。

この時点でクオリティが高すぎる!ただ、よりよくするためにここから修正していく。


キャラ設定は、情報を整理してからしっかりと

「前田っぽさ」とは? 

みこまさんのイラストをもとに、より「ビックリマン風」「前田らしさ」を強めるため、それぞれの特徴を整理してみる。NASUの小野くんに以下の点をお願いした。

・もっとビックリマンみたく、前田っぽく、みこまさんにお願いしたいんだけど、どうしたらいいか?
・具体的にラフ描いてみてほしい
・ビックリマンの裏面、本物っぽくしたいから裏面のラフ作る
・このビックリマンは、前田高志の総合的な名刺として使う。真面目に本気に。本物感出したい。ビックリマン名刺で1番のクオリティにしたい


ビックリマンらしさ、前田らしさとは?

小野くんより「ビックリマンへ登場する戦士のようなかっこよさよりも、ビックリマンと前田さんコラボしたの!? という本物感を目指した方がリアルでいい」とのことで特徴をまとめてくれた。

武器はどうしよう。靴はどうしよう。この妄想が鍵だった。僕は昔からこういった妄想が大好きだ。子どものころの前田は、口数が少なくぼーっとしているタイプ。クレヨンしんちゃんでいうボーちゃんのようだった。今でもその要素が残っている。

基本ぼーっとするのが好きなのだ。その時は、ずっと妄想をしている。例えば、重力が地面ではなく壁になったらどうなるのか?あのおじさんが急に襲ってきたらどうする?と考えても仕方のないことを妄想するのが好きなのだ。周りにいる人にもこんな質問をするので困らせてしまう。

なので、今回のスーパーマニアックは「妄想」なのかもしれない。



裏面ラフ、ナッスリマンという名前が生まれる

小野くんより、ビックリマンの裏面ラフも届いた。「ナッスリマン」絶妙なネーミングだ。ナッスリって……。意味不明じゃないですか。なんなんだ。でも、それがいい。61の数字は、僕が6月1日生まれで、弊社の創立記念日でもあるらしい。挑戦に「チャレンジ」というルビを振ったり、ナッスリマンのうわさという文言とか、雰囲気が出ていてすごくいい。小野くんは、なかなか妄想力が高い。


テーマは「日本✖️鬼」

小野くんより、今後よくするためには? の提案が届いた。このやりとりは昨年2021年の8月で、翌月に仕事でアブダビへの渡航を控えていた。そこでのお土産にしてはどうだろうとひらめいた。アブダビには、ひろゆきさんがくると聞いていた。ひろゆきさんに会った時、名刺としてこのシールを渡したら、どんなリアクションになるのかな?という妄想が膨れ上がってきた。

ということで「日本×鬼」をテーマに修正のラフを作ってくれた。鬼とは、もちろん僕の2冊目の書籍『鬼フィードバック』が由来だ。ちょうどこのやりとりをしてたころ発売になった書籍だ。和風はやまと王子感が出てていいかも知れない。しかし、ヘラクライスト感が好きなので心の中で葛藤があった。

とてもいいテーマなので、このラフに加えて「バラエティに富んでて楽しそう。かっこいいけど、顔は可愛い系で」とオーダーした。

みこまさんに参考にしてもらうため、小野くんにラフを詰めたイラストも用意してもらった。このイラストもいいのだけど、残念ながら下手だ。目指すは日本一のリスペクトのあるパロディ公式感ではなく、公式と錯覚するくらいのものにしたいので手の形やカラダ、パース、描写のタッチの精度を上げる修正というか清書をお願いした。


「ヘッド感」とは何か?

キャラ設定の中で「前田デザイン室っぽさ」とともにこだわったのは、ビックリマンのキャラクター「ヘッドロココ」のようなヘッド感。

今のイラストは、羽とナスバズーカはヘッド感はあるけれど「悪魔感」が強い。悪魔っぽさではなく、天使のヘッド。天聖界のヘッド感を強くしたい。前田デザイン室の要素も入れたい。

そこで小野くんがビックリマンのキャラクターが醸し出す「天聖界のヘッド感」の要素をまとめてくれたので、こちらも取り入れることに。


<ビックリマンの天聖界のヘッド感要素>

■天聖界メイン・ヘッドたちの色は赤・黄・青(・緑)で構成されている
■天使の輪がついている
■ゼウス以外装飾の書き込みがすごい(宝石などゴージャス)

ヘッド感要素をふまえ、修正をお願いした点

・天使の輪っか、色味の変更、装飾もっとつけたい!
・鬼の悪魔感を消す(主人公の相棒感)

前田デザイン室っぽさをプラスするため、ピンクの「童心くん」の指輪も加えたい旨をお願いした。


みこまさんの清書イラスト

みこまさんから修正イラストがあがってくる。さすが!うまい!!

ただちょっと現代的な印象なので、昭和のビックリマンのタッチに合わせて欲しいと依頼。線を太めで均一的に修正してくれたのがこちら。

めちゃくちゃタッチがいい! ただ顔は忖度が入って男前過ぎるので、そのあたりを修正依頼。


裏面は時間的なことを考えて、みこまさんの線画イラストをNASUがもらい、こちらで入れ込むかたちで進めることに。

※小野くんが作成した裏面

ビックリマンシールの裏面は、線画でつくられているものが多い。みこまさんにも、線画でもらえるようにお願いした。

※本物のビックリマンシールの裏面 http://mdkseal.blog93.fc2.com/blog-entry-109.html(画像引用)


戦士感やレア感を出したい

ビックリマンシールにより近づけるため、本家のキャラクター「へラクライスト」のような、どっしりした戦士感が欲しい。そのためにもガニ股をやめて、体型もヘラクライストのようにふくよかでしっかりした戦士っぽくしていきたい。仕事でもない自主制作なのに、ここまでわがまますぎるオーダーですいません……、ほんと。「仕事は楽しく、遊びは真剣に」タモリ精神の前田は、やるからにはとことんやりたいのです。


さらに目がかわいい印象なので、もっとコミカルに誇張しても良さそう。参考となりそうなビックリマンシール画像を送り、イメージをシェアした。


ビックリマンシールといえば、ド派手なレアカード。レアカードっぽい豪華さをだすために、もっと装飾も強化することに。


キャラ名が決定!より「本物」らしさを優先

ビックリマンシールには通常、シール表面にキャラクター名が大きく記されている。小野くんが、キャラクターネーミング案をいくつか提案してくれた。

<1回目 キャラクターネーミング案>

スーパーマエダ
スーパータカシ
マエダヘッド
タカシヘッド
タカシ爆神
鬼神タカシスト
神細タカヘッド
聖タカシシ
武将タカシズム

なかなか、いい感じ。ちなみに「神細タカヘッド」の「神細」は、「神は細部に宿る」の意味らしい。


<2回目 キャラクター案>

再度、小野くんが考えてくれた案。小野くんのおすすめは、語呂が良さそうな視点では「マエダ鬼神」。デザインは作戦を立て、ディレクション(軍配)していくという肩書きとして『軍師』を使用した「軍師 タカシックス」あたりのようだ。

1.マエダ鬼神
2.タカシ鬼神
3.マエディー鬼神
4.武将 タカシスト
5.武将 デザ・ウィナー
6.武将 タカシズム
7.武将 タカシックス
8.武将 マエディー
9.軍師 タカシスト
10.軍師 デザ・ウィナー
11.軍師 タカシズム
12.軍師 タカシックス
13.軍師 マエディー
14.大将 タカシスト
15.大将 デザ・ウィナー
16.大将 タカシズム
17.大将 タカシックス
18.大将 マエディー

全部、おもしろい! ただ今回は「え、本物のビックリマン?」というパラレルワールドを狙っているので、名前は入れないほうがいい。ということで「童神デザイナス」に決定した。デザイナスが少し中二病っぽいけど、やりきる!


裏面のデザインが完成!

裏面は、黄色い紙にプリントするモノクロ印刷。激しい汚れ(食べカスや、めくれ)は逆に安っぽくなりそうなので、若干の汚れ(リアルさ)を再現したい。裏面デザインが上がってきた。なかなか、いい感じだ。入っている文章も本物っぽいし、小学生のような妄想力が強い。

本物のビックリマンシールには、ナスのロゴが入っているあたりにロッテのロゴが入る。ナスロゴをロッテのような書体にすることで、本物感をより強くすることにした。


本物を分析し、細部にまでこだわり制作

左ひざにピンクの「童心くん」の指輪が入った修正イラストがあがってきた。とてもいい感じだ。

より本物に近づけるため、

・ベタ塗りにする
・光沢を消す
・黒い艶感を出す
・眉毛をキリッと

の修正依頼をお願いした。

イメージは、やはりヘラクライストやヘッドロココ。キリっとした戦士感が欲しい。なかなか気の遠くなる修正が続く。なんでこんなことをやっているのだろう……。小野くんが一番感じていたはずだ。

文字入りデザインバージョン

キャラクター名入りの表面デザイン。文字を入れると、さらに本物感が増した。


印刷会社に見積を依頼しつつ、シールの汚れ具合のイメージを小野くんとすり合わせをしていく。

小野くんが加工した「汚れ感」、むちゃくちゃいい感じ! ただまだビックリマン風が足りない。そこで2点ほど修正することに。

1.作字をさらにビックリマンシールに近づける
2.ビックリマンシールのキャラクターは正面向きの構図が多いので、足元だけもっと水平に近づけたい。

どちらも予算の都合から、みこまさんに依頼するのを断念してNASUがやることに。



印刷は「30年前のシールが出てきた」感を大切に

印刷会社は趣旨をわかってくれる会社に依頼

「ビックリマンシーンっぽさ」を大事にするため、シールの劣化感をどのようにだしていくかにもこだわった。めざすは30年経った今、引き出しの隅から発見された感じを出したかった。特殊印刷が必要なので、印刷会社選びも慎重に行い、NASUのやりたいことを面白がってくれるうえ、技術があり、積極的に協力してくれる印刷会社を探した。印刷会社4社にしぼり見積を依頼。

最終的に決定した印刷会社さんは、経年劣化感にも対応してくれるとのことなので決めさせていただいた。


裏面の汚れ具合を修正


本物のシールの裏面に合わせて、汚れ具合を修正。


リアルな汚れ具合になった。


表面(上の画像)は、足の向きとこん棒の大きさを修正してもらうことに。上がってきた画像が下。

タッチがみこまさんが描いてくれたナッスリマンのタッチと違っていたので、追加修正。上がってきた画像が下。

うーん、ガニマタ。180度開きすぎる。もうちょい足は、正面がいい。再度、つくってくれたのが下。


さらに足の指がシンプルすぎて世界観合わないと判断した小野くんが、再度、自ら修正してくれた。

足も水平になり、ガニ股感も解消。足の指先も、みこまさんがつくってくれた世界観に合っている。(しかし、ロッテのビックリマンのイラストは本当にクオリティが高い。)

汚れを入れていくと、より本物さもイラストに欲しくなる。イラストと印刷のいたちごっこだ。


他の人の意見も取り入れて修正

最終段階になってきたため、昔のビックリマンの雰囲気をより出していくため、NASUのデザイナーの水上さんの意見も取り入れ修正を加えていく。第三者の視点はとても大事ですから。ちなみにこのシールはクライアントワークではなくなんで作ってるかもわからない。名刺としても機能しないものになっている。しかし、これがNASUだ。

水上さんからの修正は、3点ほど。

・印刷の版ズレ
・黒の主線をぬるっとさせる(イラレ感をなくす)
・線の太さももう少し太く
・もう少しざっくり感を出す

小野くんはこのとき指摘された「イラレ感(イラストレーターでいじっている感じが出てしまっていること)」に、この後、少しばかり悩まされることになる。

水上さんからの修正に対応するため、小野くんはみこまさんにいただいたデータの、版をずらし、線を太らせて調整するも、ビックリマンっぽさはでず。もっとざっくり感を出すために、トレースして根本から立て直してみることに。


キャラクター名を赤字に変更

修正後の画像。線を太くし、色褪せた昔のビックリマンの色味に近づけてくれた。キャラクター名を赤系にすることで、ヘッド感やヒーロー感が増す結果に。

しかし線の感じがまだイラレっぽいので、水上さんから「微妙な強弱もっとつけて」とのフィードバック。漫画で使われるGペンで描いたようなものを目指したい。そういえば、最近Adobe FrescoにGペンが追加されたらしいので使ってみたい。

あがってきたのが、こちら。いいかんじ!

ただ色はさっきのほうがいいかも、という点も踏まえ、以下の修正をお願いする。


あがってきたのが、こちらだ。

「服の網目、もっとヘラクライストみたいな微妙に体のラインに沿った感じにしてみてほしい〜〜!」

今、イラレのパターンっぽいので、線の途切れ途切れな感じもあればいいなー」

と、水上さんからのフィードバック。

あがってきたのが、こちら。


あれ、こん棒が膨らんでない? あと赤黄青は、明るい方がグッとくる。みこまちゃんタッチをなるべく活かして修正してね、とお願いする。こういう些細なところは妥協したくない。

ここで印刷会社さんから、印刷の詳細についての報告が入る。ザラザラ感を表現するシルクを部分的に印刷できるか確認していたところ可能とのこと。すごい! 試し刷りした見本を送ってくれるそうだ。これは楽しみ。


と脱線しつつも、再度、鬼フィードバックをしていきます。こん棒を、もっと握っている感じをだしたい。ゼウスかヘラクライストあたりを参考にすると良さそう。

それにビックリマンに版ズレの記憶はないので、そのあたりは気を付けてとフィードバック。

小野くんは、本物のビックリマンシールをよく観察していく中で「キャラクター部分は綺麗で、ホログラム部分だけが汚れている」ことに気づく。汚れの範囲も修正してくれた(下の画像)。

なかなか、いい感じ。ただこん棒のトゲトゲをもっとデカくしたい。ベルトとスカートの皺も、ヘラクライストみたいな皺が欲しいな。あと顔を鬼の赤色にしたらどうなる?

とお願いしたところ……。


「赤くしてみたんですが、悪魔軍に近くなりました…」とあがってきたのが、こちら。これは完全なる悪魔だ。

やば、もどして! 


あと顔と髪の毛が現実味が強すぎるのでもっとビックリマンワールドに入りたい。髪の毛と眉毛白くできる? とお願いしたところ、白髪と緑髪バージョンをあがってきた。「白目を調整したバージョンとモリモリきらきらバージョン」もつくってくれたそうだ。デザインの検証はいかにパラレルワールドを意識できるかだ。

やっぱり緑髪よりも、白髪のほうが世界観に合っている。


しかし、おじいさんになってしまった。甲冑の鍔の部分も追加。コスプレ感もなくなってよかった。着用している要素が増えたので、各部位の見え方に差をつけるため、緑を一色足してくれた(下の画像)。


以下も修正。

・モザイク柄の皺の修正
・棍棒の赤い部分を伸ばす
・童心くんアンテナ(童心パワーを受け取る)追加
・勝てるセンサー(童心くんパワーを貯蓄)追加

少し小っ恥ずかしいが、堂々とした妄想設定が大事なのだ。

いいかんじ! 


ただ、いろいろ追加したのに、足元がさみしい。なんかできないかな? あと、顔をもっと丸顔にしたい。大変かもしれんけど。自分の似顔絵をかっこよく忖度していることをOKとしている状態がダサい。

こん棒の棘は、まだ小さいな。

とフィードバックしたところ、上がってきたのがこちら。足の部分だけ、先行して修正してくれた。チャレンジ精神を加速させる「イキオイブースター」と、餃子を補給してパワーを貯蓄する「ギョーザメーター」が追加され、急ににぎやかになった。

さらに修正は続く。

・餃子のヒダと太さ変更
・ベルトに猫の耳
・金棒の光り方の位置変更
・デザイナスのスを変更
・小指の皺変更
・棍棒の赤い紐部分調整

よりビックリマンシールに近づけるため、「イナス」の文字の太さを揃えて、足元の餃子のデザインを変更。

こうして完成した、ビックリマン風シール。完成画像をツイッターに投稿したところ、25件の引用、378件のいいねをもらい話題となった。

こんな記事を書いたら、またイラストを直したくなるんじゃないかと思ったけど、これ以上直すところがなかった。このナッスリマンは完全なる完成だ。よく自分が作ったものを時間が経ったら、微妙な部分と直したい部分が見えてくる。それは成長の証だとかいうじゃない? あれ、プロとしてすごく無責任だと思うんですよね。その時やり切ってないだけ、未熟でもやりきったら完全なる完成になると思う。


真面目に遊んで完成した「童神デザイナス」

最初のイラストから、途中、悪魔軍になるなど、いろいろ試みつつ完成した「童神デザイナス」。あらためて振り返ってみよう。

※原点となったイラスト
※最初の色つきイラスト
※伝説の(?)悪魔軍バージョン
※完成イラスト

表面だけで27パターン作成。

仕事は遊びのように楽しむ。遊びは真剣にこだわる。NASUは、仕事以外のデザインも全力投入していきます。今年も本気で遊んでいきます。

完成したシールの行方だが、アブダビには結局いけず、ひろゆきさんにも渡すことはできなかった。残念。かと思いきや、つい最近日本でナッスリマンを渡すことに成功しました!ひろゆきさんから「名刺としての機能全く果たしてないですね」と言われました。狙い通りで、よかったです。

今回の取り組みは、ビックリマンというコンテンツのクオリエティ、印刷、イラスト、妄想、世界感を追及するきっかけになった。僕のクリエイターフェチに付き合ってくれた、みこまさん、小野くん、水上さん、この記事の制作の浜田さん、ライター夏野さん、本当にありがとう。フェチを追求できて感無量です。次のフェチも無駄なことに全力になりそう。


さぁ、次はあれを作りたい。







〈 構成:夏野久万(@natukumaco)  / 編集:浜田綾(@hamadaaya914) /  バナーデザイン:レタッチ=小賀雪陽(@koga_bai)〉