なぜデザインを発注してもビジネスに変化がないのか?
「変化がないデザイン」とは?
あなたは、とある会社の部長です。自社のサービスのロゴデザインをデザイン会社に制作を依頼しました。デザイナーは親身になってくれて、良いデザインが上がってきました。デザインが納品された後は、サービスのWebサイトやSNSのバナーなどに展開しました。
サービスがローンチして半年が経過。残念ながらサービスの利用者数は増えません。
彼は思います「良いデザインだったんだけどな。デザインが良くてもビジネスには関係ないのか……」と。
これが「変化のないデザイン」の事例です。
デザインは、ビジネスに変化を起こすことはできないのか?
果たして本当に良いデザインであってもビジネスで成果を出すことはできないのでしょうか? 私たちの答えは、断じて否です。
良いデザインは、見た目の美しさだけではなく、確実に機能する。つまりビジネスにおいても好転する結果をもたらします。
では、なぜ冒頭のような事例が生まれてしまうのでしょうか? 3つの仮説を立てました。
仮説1.クライアントにとっての「何が良いデザインなのか?」を理解していない
まず、私たちデザイナーが「クライアントにとっての“良いデザイン”を理解できていないこと」だと考えました。
こう書くと多くのデザイナー、デザイン会社からお叱りを受けるかもしれません。「案件を受ける際は、必ずヒアリングをしている」とか、「ヒアリングには多くの時間をかけている」など。クライアントを理解する努力はおそらくほとんどのデザイナー、デザイン会社が行っているからです。
私たちも同じです。案件の規模感にもよりますが、NASUでは、ご依頼を受けてからデザイン制作に入るまでに、最低でも1ヶ月(本当は3ヶ月、理想は最低でも半年は欲しい)はヒアリングやコンセプト策定、つまりクライアントを理解する期間に費やします。
クライアントにとって何が必要で良いデザインなのか?本質とは「人に言いたくないこと」が多い。表層に現れにくく根っこの部分にあります。それが見つかるまで仮説と検証が必要なのです。
また、クライアントにもデザイン会社の本質を理解していただく必要があります。何が得意で、何を任せると効果が発揮できるのか?そういった意味でも、共創において信頼関係が築いたほうが効果のあるデザインに繋がります。
つまり「時間をかけてお互いをよく知る必要がある」。これなくしてクライアントの「良いデザイン」を知ることはできないと考えています。
仮説2.好みでデザインを選んでいる可能性がある
冒頭の事例で「デザイナーから良いデザインがあがってきた」と書きました。ただその「良い」は誰の何にとっての「良い」だったのか?
・社長や部長など意思決定者の好みで「良い」だったのか
・サービスの目的を達成する可能性が高い「良い」だったのか
後者であればいいのですが、前者、意思決定者にとっての「良い」要するに個人の好みでデザインを選んでいたとしたら、デザインが機能しない原因になります。
デザインを選ぶ際やデザイナーに依頼をする際「自分にはセンスがないからよくわからない…」と思う方がいるかもしれません。しかし、誰しもがデザインの良し悪しを日常的に判断しています。大人であれば、どんな人でも服を選んだり、靴を選んだり、家具を選んだりしてきたはずです。それらは、反射的にセンスでデザインに優劣をつけてる行為に他ならないのです。
加えてデザインは、センスだけでなく、ロジックが9割です。もちろん感覚的にいいなと感じるセンスも大事ですが「これなんとなく好きだから」や「プロジェクトのみんなが良いと言ってるから」など好みを根拠にデザインを選び始めたら黄色信号。NASUでは好みの話が打ち合わせで出たら、その打ち合わせの仕切り直しを図ります。
プロジェクトにとってのゴールを決めて、その上での「良い」を言語化をして、センスだけでなくロジックで決められる提案・決め方ができるようにデザイナーが舵を取らねばなりません。
仮説3.納品後のデザインを運用する仕組みがない
サービスや会社の見た目を変える場合、多いのがロゴデザインを新たに作ったりVI(ビジュアルアイデンティティ)のリニューアルをすることです。ロゴデザインは、サービスや会社の志を具現化したもの、思想を反映した器と言ってもいいかもしれません。しかし、実のところロゴを変えるだけではその効果は十分に発揮されないのです。
と、ロゴを作ってる会社の私たちが言うのは語弊があるかもしれません。正しく言うと、ロゴは確実に機能する効果のあるものを作ります。しかしながら、より重要なのはリニューアルで打ち出したイメージをどれだけ継続できるか?なのです。制作したロゴが掲載されるWebサイト、チラシ、名刺など…ロゴの周りのデザインがロゴの世界観を汲み取ったものじゃないと効果を発揮することが難しいでしょう。
人に置き換えても同じです。言ってることが変わってたり、言っていることと行動が伴っていなかったり、言動にバラつきがある人は不安定な人なのかな?と不安になりますよね。法人という言葉には「人」が含まれています。法人にも人格があると私たちは考えます。ロゴを作ったときに決めたイメージを一貫して継続できるかが大切です。
例えばこちらのバナーをご覧ください。これは説明のために作ったものです。このバナーを見てどういう印象を抱きますか?
感覚的に良くないと感じる方が多いでしょう。
その理由を紐解くとこうです。まず書体。これは勘亭流という書体です。この書体自体がどうという問題ではなく、NASUのロゴと伝えようとしている内容にあっていません。
それから、ロゴの背景が黄色になっていますが、必要のない装飾です。ロゴの効果を発揮できていません。
加えて、ロゴの背景の大きな透かし文字「勝てる」ですが、この文字に意識を奪われるのでロゴが頭に入りません。
これがデザイン運用の重要さです。いくらいいロゴを作ったとしても、日頃の制作物が同じ世界観で作られていないとロゴの効果を発揮できないのです。
上記のバナーは、デザイン運用の大切さを説明するために、大袈裟に作ってもらいました。しかし、笑い話ではなくデザイン運用ができてないと、このような事例は起きてしまいます。
デザインを発注してもビジネスで成果が出ない3つの仮説「相互理解」、「デザインへの誤解をなくす」、「デザインの運用」を挙げました。この3つがビジネスに変化を起こせる必要要素だと考えています。この3つを叶えるためには長くクライアントとデザインのお付き合いをさせていただくことが不可欠になります。
ただデザインするだけでは、ビジネスで良い結果を導き出すことは難しい。せっかく依頼してくださったクライアントさんに成してもらうためには、どうすればいいのか?
創業から5年以上が経ち、さまざまなクライアントのデザインパートナーとして並走してきた経験を経て、私たちは1つの答えを出しました。
それが、法人向け「NASU & デザインパートナーズ」というコミュニティです。
ビジネスでデザインが機能するために必要なものとは。
2023年2月より、NASUでは新しい取り組みとして、法人向けコミュニティ「NASU & デザインパートナーズ」を開始しました。
このコミュニティでは、デザインがビジネスで確実に機能するための仕組みを整えています。
仮説1.クライアントにとっての「何が良いデザインなのか?」を理解していない→相互理解できる仕組み
通常ヒアリングとは、仕事をする上でクライアントさんに話をしてもらうことです。しかし、深く知るためには、もっとカジュアルな雑談があってもいいと考えます。それは、既存のヒアリングという枠組みではそれはなかなか難しいもの。
NASU & デザインパートナーズでは、互いが雑談できる仕組みを作っています。
例えば、パートナーの皆様は、コワーキングスペースとしてNASUをご利用いただけます。共に作業をすることで、NASUとパートナーのみなさんの距離感を縮めています。
また、2ヶ月に1回の頻度で代表前田とパートナーのみなさんのみでの食事会「マエメシ」も開催しています。前田を通してNASUとの相互理解をはかるきっかけはもちろん、入会いただいているのは、経営者や事業責任者の皆様ばかりなので、パートナー同士の横のつながりも広がるきっかけになっています。
いずれはNASUをハブとして、パートナーさん同士で事業が進めばいいな…そんなふうに考えています。
仮説2.好みでデザインを選んでいる可能性がある
解決策→デザインの誤解をなくす
デザインを好みで選んでしまうという事象自体は、割とあるあるなことです。しかし、目的に沿った機能するデザインにするためには、それを防がねばなりません。そのために何が必要か? いろいろありますが、詰まるところは、デザインの制作の仕方、もっと言えば、デザインは見た目など装飾的なものを作るだけではない、センスだけではなく論理も重要などデザインへの誤解をなくすことだと考えます。
フィーを投じてデザインを発注いただいている以上、クライアントさんからすれば何がなんでも失敗したくないはずです。それは私たちデザインする側も同じ。とはいえ、「失敗したくない」「外せない」という心理が強くなればなるほど、社内の多数決や、発注者の好みでデザインが決まりがちなのです。その方が選んだ理由に納得がいくから。
でもそうではなくて、デザインについて、デザインの制作の進め方についての私たちの考えや日頃の取り組みを知っていただくことでデザインの理解が深まり誤解をなくすことを目指しています。
というわけで、私たちのデザイン制作のやりとりを公開しています(クライアントワークは除く)。
クライアントワークについては、リリース後となってしまいますが、制作の裏側を綴っています。
それからこのコミュニティは、コミュニティ型会社の案内でもあるので、NASUのありのままも出しています。例えば朝。NASUでは、個人のバロメーター報告と今日の予定を書きます。これもNASU & デザインパートナーズに毎朝投稿しています。
それから、毎日の日報代わりに「今日の気づき」を書いています。会社としては日報の代わりにもなりますし、ご参加いただいているパートナーのみなさんにとっては、デザイナーの視点、気づきを知ってもらうきっかけになればと思っています。
仮説3.納品後のデザインを運用する仕組みがない
解決策→デザイン相談で運用のきっかけに
私たちが大事にする価値観の一つは、納品は終わりはなく始まりであること。デザインを納品しても、そのデザインが最適な力を発揮する使われ方、つまりデザイン運用ができていないとビジネスでもうまくいかないという考えがあります。
とはいえ、ロゴやWebを発注いただいた時点で、高額な予算をすでに投下している。これ以上デザインにお金をかけられない…多くの方がそうだと思いますし、この気持ちは十分に理解できます。しかし、だからこそ、日頃の運用に力を入れていただきたい。せっかく発注いただいたロゴやWebデザインが生きるのは日頃の制作物にかかっています。
毎回デザイン発注しないといけないのか?
もっとカジュアルにデザインの相談ができないのか?
そんなお悩みを解決するための場所でもあります。NASUパートナーズには、デザインを相談いただけるグループがあります。
パートナーズの皆様であれば、無制限でご相談いただけます。NASUへの発注ではないデザインの相談でも問題ありません。全ては、パートナーのみなさまのビジネスをデザインで成していただくためです。
NASU &パートナーズは、デザイン経営の起点になる
NASU &デザインパートナーズを活用いただき、デザインを継続的に運用しつづけると、企業のブランドを構築するきっかけになると考えています。
ブランドを構築することで、言葉とビジュアル両側面で、企業の一貫したメッセージを発することができます。その一貫したメッセージこそがブランドであり、価格だけでない付加価値となり、顧客や業者から選ばれる理由になります。
また、ブランドを構築する、つまりデザインする際には、誰のために何をしたいのかという企業の目的や目標を整理する過程があります。その過程を経て、企業の強みや市場と照らし合わせたニーズを探ることで既存の事業に縛られないアイデアが生まれ、イノベーションにつながります。
私たちは、NASU & デザインパートナーズをデザイン経営の起点にしていきたいと考えています。
目指すは企業の成長をドライブさせる“デザインパートナー”
このコミュニティができて以降は、NASUに仕事を依頼いただくには、「NASU & デザインパートナーズ」に入ることが必須となります。
私たちとしても、新規のお問い合わせをいただけるのは嬉しいことです。
ですが、本当にデザインパートナーになれるかどうか。
私たちもご一緒するからには「成すデザイン」で応えたいからこそ、相互理解の第一歩として、まずは「NASU & デザインパートナーズ」を通じてNASUを知っていただきたいと考えました。
コミュニティに入るのが面倒くさいと思われる方もいるはずです。
僕らは、それでもデザインの力を信じようとしてくださるクライアントと仕事をしたい。そして、デザインパートナーとして「勝てるデザイン」で応えていきたいと思っています。
そういう僕らのスタンスを理解したうえで一緒にお仕事をしたいので、ご依頼の際はまずコミュニティに入っていただくことにしました。
株式会社NASU 代表取締役 前田高志
立ち上げに際して、私たちは「NASU & デザインパートナーズ」を「会社案内型コミュニティ」と位置付けました。
このコミュニティのコミュニケーションプラットフォームを提供してくださっているOSIROさんいわく、会社案内型コミュニティは日本初なんだそうです。
会社案内といっても、ビジネスコミュニティという限定された場所だからこそ、デザインに対する考え方・向き合い方まで、NASUのすべてをさらけ出します。
この密度の高いコミュニケーションが、いち早く相互理解を形成するための大きな第一歩になると私たちは考えています。
入会条件はシンプルです。
・デザインの力を活かしたいビジネスパーソンの方
・デザインが好きなビジネスパーソンの方
・NASUのクライアント
この3つに該当していることです。会費は1カ月あたり11,000円になります。
対象者は、クリエイターではない方々。あくまで、デザインを発注するビジネスパーソンを前提にしたコミュニティだからです。
この条件をクリアして入会いただいて、私たちから提供できる価値は“デザインの力”に他なりません。
ぜひデザインの力を信じて来てください。
株式会社NASU 代表取締役 前田高志
その先に仕事でご一緒することになった暁には、魂を擦り合わせたパートナーとして、成果をMAXにする「勝てるデザイン」で応えることを約束します。
「NASU & デザインパートナーズ」は、相互理解をはじまりとして、ビジネスとデザインの架け橋になる場所です。
私たちは、クライアントのデザインパートナーとして、ビジネスに力を与える可能性を、ここからさらに広げていきます。
「NASU & デザインパートナーズ」への入会はこちらから。
※入会時期は定めていませんが、審査制となっております。ビジネスパーソンのためのコミュニティなので、デザイナー、クリエイターの入会はご遠慮いただいております。
〈 文=木村涼 (@riokimakbn)/ 編集=前田高志(@DESIGN_NASU)、浜田綾(@hamadaaya914)/バナーデザイン=写真=久本晴佳(@hi_sa_ko__)、村山歩弓(@___mu110)〉