2021年12月28日、この日は、株式会社NASUの最終出社日でした。NASUは、大阪のなんばに本社がありますが、普段は1名は東京勤務で、もう1名は期間限定で福岡でのリモート勤務。この日は、NASUメンバー全員が初めて集まった日でした。会社の最終出社日と言えば、大掃除をしたり、納会をする会社が多いかと思います。




NASUの場合、最終営業日は……



映画を見ていました



勤務時間中に、社長公認で、いや、むしろ社長の呼びかけで映画鑑賞。でも、決して遊んでいるわけではありません。深いわけがあります。なぜなら、観ていた映画は……



不朽の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』!!!


実は、この映画はNASUの社名の由来なのです。

弊社、株式会社NASUは、法人としては2018年6月1日に創業しました。ただ、NASUのとしての活動のはじまりは、そこから2年遡ります。2016年の2月に代表の前田さんが屋号を「NASU」と定めデザイナーとして活動を始めました。

前田さんが、「NASU」を屋号にすると決めたのは2015年ごろ、前職の任天堂をやめると決意し、退社するまでの間に決めたのだとか。NASUの社名は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクのセリフ「為せば成る」からNASUになりました。


実は、まだ映画を見たことがない。

ここまでの話は、NASUメディアや、前田さんがよく発信していることです。社員である私たちも当然知っています。とはいえ、全員が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見たことがあるわけではない模様。

私、広報の浜田に至っては「社名の由来となった映画だから見とかなくちゃ」と、自宅で見ようと思ったところ、開始10分くらいで寝てしまう体たらく……。決して映画が面白くないわけではありません。そうではなくて、一人では、なかなか興味を持てなかったんだと思います。


そんな話を会社でしたところ、

え! 開始10分で寝た? どこで寝るわけ?

ええと、犬が車に乗って戻ってきたあたりですかね……。

ありえない! あと、犬じゃなくて「アインシュタイン」、車じゃなくて「デロリアン」! じゃあ、 みんなで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』見る?

そんな会話が発端となって、NASUメンバーが全員揃う日に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観ることになりました。


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にNASU「らしさ」あり。

そんなわけで、全員が揃う日に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』上映会を行いました。

いやぁ、楽しかったですね。スピード感がすごい。終始ハラハラドキドキ。全てのシーンに意味があり、伏線があるのも面白い。開始10分で寝てしまった私は確かにありえないと今なら思います……、ってめちゃくちゃ普通の感想になってしまっていますが、ただ楽しかっただけではありませんよ。他にも効果がありました。


それは、NASU「らしさ」の共有になったことです。


NASUは代表の前田さんが一人で、設立しました。社員を雇うようになったのはそこから1年後の話、そこから徐々に拡大し、今では7名になりました。


社員が増えるにつれ、課題となっているのが、前田高志らしさをNASUらしさとして受け継いでいくことです。


今は、「前田さんにお願いします」という依頼の仕事がほとんどですが、ゆくゆくは「NASUさんにお願いしたい」と言われる割合が増えるようになりたい。さらには「NASUの〇〇さんにお願いしたい」となるようにもしたい。

そのためには「NASUらしさ」とは何であるか? の継承が必須なんです。それは日頃の仕事のやりとりや会話を通して、日々少しずつ受け継がれています。この映画を見ることで、前田さんがこの映画が好きな理由、そこからのNASUらしさを感じることができました。

映画から感じた、NASU「らしさ」、NASUに繋がっていると感じたことについて書いてみます。


コンテンツ重視

NASUの社名の由来は、前述した通り『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の「為せば成る」のセリフです。あくまで一般論ですが、デザイン会社の場合「〜デザイン」という社名が圧倒的に多い。NASUの場合は、これに当てはまりません。なぜそうしたのか? それは、NASUは業種で言えば、デザイン会社にあたるが、それだけに止まらないことを意味するからです。

現に、NASUでは、コミュニティもやっています。いずれは、漫画などコンテンツを作ることも視野に入れております。


明快でテンポがいい

前田さんは「デザインはスポーツのように勝ち負けがはっきりしているものだ」と常々言っています。デザインを見た人の心が動き、行動がかわる「勝てる」デザインこそがNASUの目指すものです。

世の中にはいろいろなデザインがあり、どれがいいかはデザインを求める人が決めることだと思います。でも、NASUとして大事にしているものは「わかりやすさ」です。曖昧で複雑でゆったりしているよりも、わかりやすく、はっきりしていて、テンポがいいのがNASUらしさ。曖昧なのがいけないのではありません。そういう良さももちろんある。ただ、そうだとしても見る人に的確に伝わるのは、明快さでありテンポのよさだと私たちは考えます。これは前田イズムであり、NASUらしさだなと映画を見て感じました。


最後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とNASUについて、前田さんに感想を聞こうとしたら、めちゃくちゃしっかりとエモいコラムを書いてくれたので、そのまま掲載します。


NASU to the Future

NASUを起業したのが今からちょうど6年前。その頃は、任天堂を退職し、不安で不安で仕方なかった。しかし、社名のNASUの由来となった「為せば成る」にあるように、心の中は決意と覚悟で満ち溢れていたので前向きな不安だった。

「デザインで成す」お客様の成したいことをひとつひとつ為すことで夢を実現するという意味だが、僕自身がデザインの仕事で成したいという“決意”の現れでもあった。





社名は死ぬほど悩んだ。何をやってもダサく思えてしまって、1人で決断をした時は「要は実績、社名なんてどうでもいい。良いデザインをしていこう!」と思った。お笑いコンビの芸名ってなんとなく雑誌に載ってたワードからとったというのある。「あんまり考えてないよー」というスタンス。ダウンタウンがそうだったんじゃないかな。だから、「A Design」にしたら年表の上にくるのかなとか、「Mデザイン」とか「さらっとつけたよー」って感じにしようとしていた。



大学時代からの友人の細川剛(博報堂/クリエイティブディレクター)に話したら、「フリーランスをやっていたらこれから辛い時が必ずくる。その時に支えになる社名にしたほうがいいよ」とアドバイスをもらった。「前田だから、GO AHEAD(先へ進め!)とか(笑)」「それ、GOの名前入ってるやん(笑)」なんてやりとりをした。でも、彼の「心の支えになる社名がいいよ」というアドバイスはストンと納得いって、そこから100案くらい社名を考えた。

ひととおり、すぐに思いついたものを挙げていったが、どれもしっくりこない。カッコつけた恥ずかしいものばかり。ある著名なコピーライターが「人間から出てくるものは基本的に臭くて食べられない。案を出し切ると、食べられるうんこが出てくる」と言っていた。そういうものと理解していたのであきらめずに考え続けた。結局、ぼくが昔から好きなものを掘り下げていった。今から思うと、自分の会社のネーミングというプロジェクト。自分へのヒアリングがフリーランスとして最初のデザインワークだったのだ。ヒアリングにおいて聞くことは、過去、現在に続いていることは未来でも変わらないことが多く、これは今でも仕事で使っている。



ぼくは映画『Back to the Future』が死ぬほど好きだ。初めに見たのは「PART 1」より「PART 2」。小学校の時に友だち5人で見に行った。シルベスター・スタローンの『ロックアップ』派と『Back to the Future』派でどっちに行くかで意見が割れた。でも、結局テレビCMで観た“空飛ぶスケボー”を観たくて『Back to the Future』になった。『ロックアップ』を観に行っていたら、社名はNASUではなかったかもしれない。

多くの人がそう感じたと思いますが、『Back to the Future』は心から「映画ってこんなに面白のか!」と思えた作品だった。それ以降『Back to the Future』を超える映画には出会っていない。しかし、そんなに鮮烈に衝撃を受けたのに映画を作りたいとは思わなかった。映画ということを忘れ、世界に没入していたのかもしれない。心に残ったのは物語の中で「為せば成る(If you put your mind to it, you could accomplish anything)」だ。しきりに台詞に登場する。「これから白紙の未来を作っていくのは自分だ」と当時小学生の自分は本気で思ったのかもしれない。映画ではなく自分自身の未来を。



『Back to the Future』を超える映画を探していた。コンテンツに惹かれるようになっていった。ゲームコンテンツでは『ドラゴンクエスト』。漫画コンテンツでは『ドラゴンボール』がNo.1だ。(とことんぼくは王道が好きなんだな……)デザインを好きになったのは『ドラゴンボール』の影響だ。コンテンツが好きだ。任天堂に入った理由のもそのひとつだ。“コンテンツをデザインの力”で伝える。独立後もやっていることは同じだ。

クライアントのコンテンツを種を発見し「コンテンツ×デザイン」で成功に導くことこそが、NASUの強みだと思っている。


NASUは、本気でデザインの力を日本に残せる会社を目指す。NASUは、未来の日本にデザインの力を残す会社へ。デザインの力で、みなさんの成し遂げたいことをお手伝いしていく。

それを再確認した映画観賞会だった。






〈 文=浜田綾(@hamadaaya914)、前田高志(@DESIGN_NASU)/バナーデザイン=小野幸裕(@yuttan_dn52)〉