NASU代表、前田高志の旧ブログより転載した記事です。「NASU CREATOR’S DIRECTION」現在休止中のサービスですが、ご興味のある方はこちらよりお問い合わせください。

NASU代表 前田高志がコンサルティング対談をおこない、その様子を記事にする企画「NASU CREATOR’S DIRECTION」7回目となります。

今回の対談は、10年勤めた印刷会社「株式会社キングプリンターズ」を退職し、2020年6月から「チームワークあふれる社会を創る」という理念を掲げる「サイボウズ株式会社」へ転職する「もんざえもん」こと、赤松翔さんです。もんざえもん(赤松翔)さんは、前田さん主宰のオンラインコミュニティ「前田デザイン室」で失敗をテーマにした雑誌『マエボン2』の編集長を務めました。

※ちなみに、もんざえもんと名付けたのは前田さんです!

もんざえもん(赤松翔)


1982年生まれ、37歳。

雑誌でライターを約2年務めた後、飲食業界に転職。飲食業界で接客や販促企画、営業を6年半担当。その後印刷会社「株式会社キングプリンターズ」のマーケティング部で10年勤務。2020年6月から「チームワークあふれる社会を創る」という理念を掲げる「サイボウズ株式会社」へ転職、上京。

社会的価値を探した3年間

前田:コンサル対談を受けていただいてありがとうございます。何でこのコンサルを受けようと思ってくれたんですか?

赤松:10年勤めた印刷会社のキングプリンターズを退職して、サイボウズで働くんですけど、サイボウズは個人としての自立を推し進める会社なんです。会社という組織の枠組みから離れて、一個人として自分を肩書きづけるんだったら僕は何なのかなという相談をしにきました。実は3年ほど前から将来が不安だったんです。キングプリンターズのマーケティング部で中間管理職として働いていて、月の給料もそれなりにもらってたんですけど、不安で。

前田:なんで不安なの?役職ついて良いポジションにいたんじゃなかった?

赤松:はい。会社も安定してるんですけど、「会社を離れたら、僕個人は何ができるんだろう」と思って。肩書きだけが大事とは言わないですけど自分1人でも生きていける武器がほしかったんです。それでいろんなセミナーに通いました。ライター講座やマーケティング講座、SNSの運用講座などですね。

セミナーに行ったり、それこそ前田デザイン室に入ったりと行動を起こしているうちに、「このままでいいのかな」という思いが強くなって、会社に1年前「辞めるかもしれません。」と言いました。

前田:1年前から辞めるって言ってたの?長っ!あ、でも僕もそうだった。

赤松:会社に迷惑かけるわけにはいかないですし。そのまま会社に残っていたら本当は今年、結構いいポジションにつかせてもらう予定だったんですよ。その話を聞いた時すごく嬉しかったんですけど、でもそうなると会社を辞められないなと思ったんです。それで、「10月までに会社を辞めるかどうかを決めるので、この半年間転職活動の意味も込めていろんな人に会ってきていいですか?」と話して、いろんなところに面談へ行きました。プロモーションを手掛ける会社とか、沖縄のさとうきび畑のマーケティング担当の方と喋ったりとか。

前田:何その振り幅。

赤松:場所にこだわりはなかったんですよ。自分に社会的価値があるのかが知りたかったので。

前田:でもそれだけいろんな行動してたら、自分の方向性で見えてくるものがあったんじゃないの?

赤松:見えてこないっすね。前田デザイン室でマエボン2の編集長をやりましたが、思うようにいかないことが多かったので余計崩れたというか、アハハハッ!!

前田:マエボン2やる前は?これがあるからキングプリンターズを辞めて、サイボウズに行くって決めたものって何だった?

赤松:サイボウズでもマーケティングのお仕事、マーケッターになりますね。このスキルをさらに高めたいと思いました。でもこの仕事って世間から見た時分かりづらいよなって。分かりやすく示せる自分の強みを求めてるんだと思います。

前田:マエボン2ではマーケッターを意識してたの?

赤松:そうですね。それを活かしてマエボン2のプロジェクトをする意識はしていました。マエボン2に関して、前田さんに意見をもらってハッとしたことがあったんです。制作にあたって行ったクラウドファンディングの追加リターンで、僕が「名刺デザインやります。」って言った時に「もんざえもんの強みは名刺デザインじゃない。何をやっている人かわかりにくくなるからそれは違う。」って言ってくれたじゃないですか。デザイナーじゃないし自分でも名刺のリターンじゃないって分かってたけど、以前出したリターンで名刺が売れたから、出した方がいいんじゃないかという思考になったわけで。

前田:あー、そういう思考はマーケッターだからか。

赤松:マーケッターか分からないですけど、名刺デザインは売れやすいだろうと思って。

前田:マーケッターって売りやすいものを売るってことなの?

一度売れた実績があるものを売るのは多くの人がたどる流れだと思う。目に見えた反応に可能性を感じるし、売れると純粋にうれしいからだよね。それは分かるんだけど、その瞬間の反応に飛びついちゃうっていうのはまだ考え方が浅い。

赤松:マーケッターの仕事は「売れる仕組み」を作ることですが、実績が欲しいのはあります。ただ、マーケッターの必要なスキルは本業で身につけていくし、サイボウズで仕事するのは理念に共感した上でだから本当に良いと思っているんですけど、僕個人で見た時に何もないなって。陽気なよくしゃべるおっちゃんではだめだなーと(笑)。

前田:本業でやってきたことに自信があったらそうは思わないはずだから、本業に自信が無いんじゃない?自信があったら副業で名刺デザインしようと思わないはずだから。まだ本業の突き詰め方が足りてないんだと思う。

赤松:ううう、確かに。

前田:以上。

赤松:いや!早いっす(笑)。

現状を見つめ直したきっかけは「前田デザイン室

前田:お父さんお母さんってきびしかった?

赤松:いきなり話変わりますね!ええと、厳しかったです。

前田:何をやってる人?

赤松:父は中小企業の機械メーカーの部長でした。母は専業主婦で、2人とも広島から大阪に来たんです。貧乏生活をしていたので「子どもたちには同じ苦労させられへん」って、大学は国公立しか行ったらダメと教育されました。

前田:厳しかったんや、あれ?国公立大学行ってたっけ?

赤松:行ってないっす(笑)

前田:怒られた?

赤松:受からなかったので、「直ぐに就職しなさい。」と言われました。

前田:もんざえもんは頑張らないといけない精神がめちゃめちゃ染み付いてて、そこが悩みの発端な気がしてる。もしかしたら、国公立に行ってないから安定できないんじゃないかと不安を感じて、何かに依存せず個人で生きていける力を追い求めてるのかもしれないけど、なくたっていいでしょ。

赤松:そうですかね?このままでいいのか不安でしかないですけどね。それにずっとやりたいことがやれてないし。

前田:そうなんや、マーケッターはやりたいことじゃなかったんや。

赤松:まだ絶対そうだと言いきれないからサイボウズに入ったのもあるんです。僕は結局、組織の中に入らないと生きないタイプなんだろうなとは思うんですけど。

前田:なんで前田デザイン室に入ろうと思ったの?

赤松:不安なままずっと活動してたので脱皮したかったというか、変わりたかったんです。たくさんセミナーに行ってる中の一環として入りました。

前田:今みたいに前田デザイン室が楽しくなったのはいつから?

赤松:浜田さんが編集長を務めた雑誌「マエボン1」に関わってからですね。マエボン1制作の頃にちょうど仕事が落ち着いてて、参加してみたら楽しくて。

マエボン1がなかったらたぶん、前田デザイン室を辞めてます。

前田:作ってよかった(笑)。

赤松:マエボン制作の途中で僕に「もんざえもん」ってあだ名付けてくれましたよね。「しょうって感じじゃない、もんざえもんやろ。」って、いい感じでいじってもらえて僕的にはおいしかったです。

前田:そう。最初もっと固い人だったよね。

赤松:最初はその固い感じがいいと思ってたんです。そこからもんざえもんってあだ名のおかげで前田デザイン室メンバーとの距離が近くなって、いろんな人と関われて。僕、前田デザイン室に出会ってなかったら絶対転職してなかったんですよ。これは絶対言えます。

前田:まじで!それはうれしいなあ。

赤松:ずっと大阪で暮らしてきて就職も大阪で、それで生活が安定してたんです。でも前田デザイン室に入ったら、自立している方が多くて。自分のやりたいこと見つけたいなってすごく意識しました。

自分の根底にあるものは「コミュニケーションスキルです。」

赤松:今日持ってきたものがあって、前田デザイン室の「岐阜合宿」の時に講座をさせてもらった「コミュニケーションスキルブック」という資料です。僕は、これを10年くらいずっとやっていて。

前田:すごい!めっちゃ勉強してる!!これ、俺にはできないわ。

赤松:教えてもらったコミュニケーションスキルは、「聞く」「報告を受ける」「叱る」「質問する」「会議する」などの8項目に分かれているんです。最初教えてもらったとき上手くできなくて、でもこのまま学んでいったら上手くなるかなと思って勉強しました。長い間、部下が上手に育たないって悩みがあったし。

前田:コミュニケーションスキルは自主的に学んだの?

赤松:2年間は会社から学んだんですけど、それ以降は自主的に。コミュニケーションスキルはずっと実践し続けてきたので、すごく自信があるし僕の根底にあるものです。

前田:元々コミュニケーション取れない人じゃないでしょ?

赤松:はい、でもそれに甘んじてノリだけでコミュニケーション取っていて。それでいいのかなと思い始めたからコミュニケーションスキルを学ぼうと思いました。

前田:もんざえもんは昔ナンパしてたって聞いたけど、それってコミュニケーションに自信があったからなのかな。

赤松:若いときだけですよ(笑)。でもそういうナンパなどのプライベートや、仕事でもコミュニケーションは取れるんです。けどもっと深いところの、その人が本当にモチベーション上がる言葉が何かなどは全く分からなかったんですよ。コミュニケーションスキルを学んだら自分の力になったし、最終的にある程度評価をもらって仕事を辞められたことは良かったです。チームとして成り立っていたから引き継ぎもできたし。

前田:コミュニケーション好きなんだね。

赤松:大好きですね。結局自分っていうのは、これしかないんだろうなと思ってます。

チームに必要不可欠なプロジェクト兄貴

赤松:でも僕クリエイティブが好きなんですよね。無理やり紐付けようとしてるので変な言い方になるんですけど、前田デザイン室にハマってないんじゃないかなって常に思ってたんですよ。

前田:いつまで思ってた?

赤松:宇宙兄弟の新刊プロモーションで、プロジェクトリーダーをやらせてもらった時ですね。クリエイティブ出身じゃないので支える方しか向いてないんじゃないかなと。だけど自分の支えで、みんなのクリエイティブが100%吐き出せるんだったら自分も前田デザイン室にいていいという感覚があるんです。それって何だろって。

前田:答え出てるよね?そういう支えていく人が向いてるんじゃない。そういう人、なかなかいないでしょ。人に丁寧に一対一で向き合って、コミュニケーション取れるっていうのが、1つの才能やと思うけどね。兄貴みたいな感じじゃない。プロジェクト兄貴。

赤松:肩書きが欲しいわけじゃないんですけど、それでいいのかなっていう。例えば僕はライターとか、デザイナーじゃないのでどこかで自分って自立してないなって思っちゃうんですよね。プロジェクト兄貴じゃ生活していけないでしょ?

前田:そんなことないでしょ。めちゃくちゃ需要あるよ。だってキングプリンターズでもチームビルディングとか、そこを評価してくれたわけでしょ?一対一のコミュニケーションのプロって名乗ったらいいじゃない。チームビルディングで1番必要な人、もんざえもんはリーダーが欲しいと思う人だね。まとめ役として上に立つってよりかは下から支えるイメージいいなと思ってて、下リーダーみたいな。ダーリー。ダーリーだよ。

赤松:業界っぽく言いましたね(笑)。

前田:リーダーじゃないのよ。

赤松:あ、それ聞きたいんですけど僕リーダーっぽくはないってことですか?

前田:リーダーっぽくあろうとはしてるけど、リーダーじゃない方が力を発揮できると思う。

赤松:なぜですか?

マエボン2編集長としてのもんざえもん

前田:マエボン2の話をしようか、編集長としてリーダーやり遂げたと思うけど、引っ張っていく感じじゃないのよね。これは合う合わないだから劣ってる劣ってないじゃないよ。編集長を任せてよかったところを言うとやっぱり一対一のコミュニケーション。

赤松:引っ張っていけてなかったですかねー。

前田:正直に言うと僕は物足りなかった。ごめんね。なんでかって言うと、例えば「水曜どうでしょう」のディレクター藤村さん嬉野さんの取材企画があったじゃない。あのインタビューは居酒屋さんだったから、もんざえもんがお二人の話を聞いてる途中で気を遣って醤油差しに手を伸ばしたんだよね。そのことで藤村さんに「俺だったら醤油さしに手を伸ばさない!」って言われてたけど、僕も同じことを言ってると思った。醤油差しを取ると、その場の空気は良くなるかもしれないけど、マエボン2を面白くすることを考えていたら取材に全力投球してもよかった。言葉は悪いけど、浅はかなの。企画に対しても、そう。企画をもっと深く潜って考えていたら、藤村さんと嬉野さんに失敗談を聞こうとはならないよ。僕が水曜どうでしょうに関してはあんまり詳しくないから、企画に関して意見言えなかったけど。

前田:他の企画に関してもだよ。もんざえもんが素直で柔軟ってこともあるけど、僕が「企画こうしたら。」って言ったら、大体「そうですよね。」って通る。本当に編集長として考えていたら「前田さんここはこうで、こう考えて、こういうことなんです。」って、自分が考えた企画を通したい熱意が出てくるはずじゃない。だけどそれがなかった。

赤松:なかったですね。

前田:マエボンは前田デザイン室のみんなで作る雑誌だから、僕はマエボン2のこと四六時中考えてたわけじゃないよ。編集長のもんざえもんが1番マエボン2のこと考えてたじゃない。

赤松:それは、そうだと思います。

前田:それなのに、僕が企画を覆せてしまうっていうのは、やっぱり深くまで潜れてなかったからだよ。

赤松:そうですね。それで言うと、僕と前田さんが前田デザイン室内で1月に、マエボン2の公開ミーティングをしましたよね。僕がバーッと出した企画がほぼ通らなかった時点でもう、企画を通すことに必死でした。マエボン2が良くなるようにというよりかは、マエボン2を完成させるのが自分の使命という考えになってた。余裕がでてきた最後の方に面白い企画の方にいって。思考の順番が逆なんですよね。それはすごい反省点です。

前田:もんざえもんは編集長としての使命を果たそうとしたんでしょ?考え方がチーム的なの、そこに出てるよね。

赤松:みんなに迷惑かけるだろうな、が先行していたので。僕のダメなところですよね?

前田:編集長として、企画としては弱いところもあったけど、チームビルディングで下から支える人って意味では大正解だから、もんざえもんはダーリーだと思うよ。

赤松:いやでもだめですね。今の聞いて僕、ちょっと反抗心出てますもん。結局クリエイティブの世界を諦められてないんでしょうね。センスもないのに。諦めたらいいのかなあ、自分の質を上げたいんですよ。

前田:自分はできないって思い込むのはよくないから諦めなくていい。ただ自分のコアはコミュニケーションにあると認識してクリエイティブをしたら強いよ。質を上げるためにはもっと考えること、幸せになれる人を増やすこと。

赤松:そこはすごく勉強になりました。今までの仕事の企画書って、お互いが幸せになることなんてどうでもよかったんですよ。むしろ企画を通すことが仕事になってたので。

前田:そうか、そうやって仕事してたのか。会社で中間管理職が長いって言ってたけど、もんざえもんってあんまりみんなからイジられないでしょ?

赤松:みんなから怖いと言われてましたし、そうですね。退職する前の最後のほうでやっといじられるようになりました。

前田:かっこつけてるからいじられないんだよ。会社でうんこ漏らすくらいの気概がないと(笑)。ツイートもかっこつけてるし、まだ赤松翔なのよ。もんざえもんになれてない。マエボン2の編集長やってる時もさ、「企画どうしたらいいかわかんない!!どうしよおおお!!」とか言えばよかったんだよ。もっとマイナスの部分さらけ出して。

それにもんざえもん、「何者かになりたい」って言ってたやん。フワッとしてるわーって思った。近くにいるのに考えてること全然分からないもん。

赤松:それで毎日ブログ書いたら?って言ってくれましたね。

前田:そうそう。いまマエボン2の反省点かける?思い出は美化されるからその前に書いた方がいいよ、かっこつけずに。

赤松:はい、書けます!

コンサル対談の後日、赤松さんが書いたマエボン2の記事はこちらです!

経験を広める活動

赤松:僕、今まで前田デザイン室のプロジェクトをうまく動かしてきたって自負があったのかもしれないです。失敗してもいいよって言われながらも綺麗にまとまればいいわって。飛び抜けて面白いことできないから、余計にそう思っちゃってるのかもしれないです。

前田:プロジェクト兄貴のポジションは絶対必要だし、その中でクリエイティブのことも伸ばしていけばいい。まずはプロジェクト兄貴、ダーリーに力を注ぐ。というかこのコミュニケーションスキルの資料がある時点で答えでてるよ。

赤松:もし前田さんに「違う」って言われたら考えないといけないなって思ったんですけど。

前田:それはならないけどね。だってなかなかこんなことやる人いないもん。自分の経験談を元に発信していったらいいよ。「もんざえもんコミュニケーション」みたいな。悩んだ中間管理職の人たちが読むかもよ。特に社長にも必要だと思うし、僕も読みたくなる。セミナーとかやったらいいじゃん。

赤松:やってみたいです。前田デザイン室の岐阜合宿の時、この題材で講座させてもらってすごく面白くて、やってよかったと思ったんです。セミナーやってみます。

前田:楽しみにしてる。もんざえもんにはそうやって、セミナーができるくらいの知識や経験があるんだからそれが立派な武器。1人で生きていける武器より、みんなと生きていける武器を持っているのは強いよ。

<聞き手=前田高志/構成・執筆・編集=山下桃音/撮影・監修:浜田綾