僕が好きだったCDジャケットは、実はデザインの必殺技の宝庫だった!?
みなさん初めまして。
NASUのアシスタントデザイナー 小野幸裕です。
幼稚園のときから現在に至るまで、みんなからゆったんと呼ばれています。
以後、お見知り置きを…。
普段はNASUの東京オフィスでアシスタントデザイナーをしています。デザイナーになれるように日々頑張っています!
さて、今回はNASU社員のスーパーマニアックを紹介するということで、自分の持つ「どこに需要があんねん!」と思われるようなニッチな記事を紹介したいと思います。
突然ですが、皆さんは“デザインの必殺技”をご存知でしょうか。
“デザインの必殺技”とは、NASU代表の前田さんが書いた本『勝てるデザイン』に登場する言葉です。デザインにはこれを使えば間違いないという勝てる技が存在していて、その技に名前をつけたのが“デザインの必殺技”です。
まずは本題に入る前に“デザインの必殺技”について詳しく説明していきます!
必殺技と僕
僕が“デザインの必殺技”に出会ったのは、今から2年前。
前田さんのオンラインセミナーに参加したのが、きっかけでした。そこで聞いたデザインの話や考え方がすごく面白くて、気がついたら前田さんが室長を務めるオンラインコミュニティ「前田デザイン室」に入っていました。
コミュニティではちょうど『勝てるデザイン』の巻末に収録されるワークをメンバーに先に体験して欲しいという募集をしていて、入室したての僕はがむしゃらにワークをこなしていきました。
そんな中で、特に思い入れのあるのが「デザインの必殺技を集めろ」というワークです。前述した“デザインの必殺技”を街中から探して、集めて、技名をつけるといった内容なんですが…。
めっちゃくちゃ楽しくてたまらないんです!!!
意識して街中を見てみると、世界が変わったんじゃないかな!?と錯覚してしまうくらいに、見え方が変わってきます。世の中はデザインと必殺技に溢れかえっている…!!
この楽しさを早く誰かに伝えたくて、作った必殺技をまとめてSNSへ投稿したところ、700いいねという人生初バズりをすることができました!!
今まで自分の発信で、こんなにバズった経験がなかったので、ほんっっっっっと興奮が止まりませんでした。
しかも“デザインの必殺技”の魅力をいろんな人たちに伝えることができて、喜びなのか驚きなのかわからない汗という汗が出まくった気がします…。
へへ…。
そうやって夢中になっている姿を見てくれていた前田さんから、前田デザイン室の“デザインの必殺技”をカードゲームにした“デザインの必殺技”カードゲーム Desig-winのプロジェクトリーダーをしてほしいと任命していただきました。
人生初のプロジェクトリーダーは、楽しいことも辛いことも今まで経験してこなかった分、色んな感情が波のように迫ってくる濃厚な2年間になりました。
このように“デザインの必殺技”は僕の人生を変えたといっても過言ではないくらいとんでもない存在です。このコンテンツと出会ってからは四六時中いろんなところ探してしまいます。
もう四六時中…探して…うっ!!!
そう、僕はこの2年間でデザインを見たらすぐ必殺技が思い浮かんでしまうくらい「必殺技」に取り憑かれてしまったのです!!!!!
街中歩いていても「あ、フォントウォールだ」
テレビを見ていても「あ、スリットカッターやん」
デートしていても「あれ?これ新技じゃね?」
まさに狂気。
だから今回、僕の止まらない必殺技欲を満たすような記事を書かせていただだきます!!!!!!!
音楽と僕
ただ、街中にあふれるデザインを解剖するだけでは僕のスーパーマニアックにはつながらないと思ったので、僕が大好きな音楽に絡めてCDジャケットから必殺技を見つけていこうと思います!
僕が音楽にハマるきっかけは、中学3年の頃に父親が読んでいた漫画BECKでした。音楽業界の厳しさ、それに立ち向かう主人公たちの熱量を見て「音楽ってすげぇ!」と感動したことを覚えています。
またBECKは実在したバンドを取り上げているので、漫画に登場した洋楽をまとめたガイドブックも販売されていました。このガイドブックがさらに中学生だった僕の知識欲に火をつけ、がむしゃらに洋楽を聴き漁りまくりました。
高校の頃は、自分もバンドを組みたくて軽音楽部があることを基準にして進学先を選んで。やっと組めた念願の初バンドではGreenDayやThe Clashを筆頭にポップパンクをカバーしたり、オリジナル楽曲を作ったり、音楽中心の生活を過ごしました。
大学生時代にはDJをさせてもらう機会があり、音楽への知識欲に拍車がかかりました。BOOK OFFやDISK UNION、TUTAYAにあるCDをとにかく片っぱしから聴きまくり、自分の知っている音楽の幅を広げつつ、DJ活動を続けます。
最終的には『性春ないと。』というDJイベントも主催しました。
バンドやDJ、SNSでの出会いを通じて、パンクロックを中心に様々な音楽や音楽が好きな人たちと触れ合うことができました。もしかしたら、必殺技を集めるという収集癖は音楽への貪欲な知識欲からきているのかもしれないです。
僕は今までの経験と出会いを通じて、音楽が人生を180°変える可能性を秘めていると実感しました。
ただ、数が多すぎてなかなか出会えない人たちもいる。だから、僕は音楽と出会う架け橋になりたいと思い、DJという活動をしてきました。
その思いはデザイナーをしている今も健在で、いつか僕の作ったCDジャケットのデザインで、人生を変えるような衝撃的な出会いをしてもらいたいと思っています。
またサブスクリプションや店頭での試聴機の使用が減ってしまった今、新しい音楽と出会う架け橋はCDジャケットだと思っています。だから、一撃で魅力を伝えるCDジャケットは、デザインの必殺技で溢れているはず!!
ということで。
今回は必殺技が使われているCDジャケットを片っぱしから集めてみました!
うおおおおおおおおおおおおお!!!
84枚!!!!!!!!!!!!
“デザインの必殺技”カードゲーム Desig-winに収録されている100の必殺技のうちから2日で84枚も見つけちゃいました…。
うへ…うへへ。
どのCDも素晴らしい楽曲ばかりなので、全て紹介したいのですが。
今回特に思い入れのあるCD TOP5 厳選しました。アーティストとアルバムの魅力、そしてなぜこの必殺技が使われたのかの考察を踏まえて紹介させていただきたいと思います。
では、早速行ってみましょー!!!
1.Beach/銀杏BOYZ
最初は銀杏BOYZ、4人編成最後のアルバム『BEACH』
銀杏BOYZは前身のGOING STEADY時代から日本のパンクバンドの金字塔的な存在で、数々の伝説を残してきました。
その中でも、このアルバムは銀杏BOYZの「暴」が詰まりに詰まったアルバムです…。
僕は漫画『モテキ』に登場する中柴いつかちゃんが、カラオケで名曲「BABY BABY」を熱唱シーンを見て、初めて銀杏BOYZの存在を知って衝撃を受けました…。
轟音、爆音、なのに心打たれるこの優しいメロディー!!!
なんなんだこのバンドは!!!!!!!
一度聴いてからは、耳から離れず、ボーカル峯田の下手くそだけど熱量あふれる歌い方にどっぷりとハマっていきました…。
ちなみに初めて主催したイベント「性春ないと。」は銀杏BOYZの楽曲「駆け抜けて性春」から拝借してます!
汗臭い性春。溢れ出る煩悩。
学生時代の鬱憤をここぞとばかりに爆発させる楽曲一つ一つに心打たれ、ライブが見たいなぁ。新作はまだかなぁとCDを聴くたびに思い馳せていました。
僕の大学生時代の性春は銀杏BOYZでした。
そして、待望のアルバム『光のなかに立っていてね』と『BEACH』が2枚同時リリースされることが決定しました!やったぜ!!!と思ったのも束の間。
同時に、銀杏BOYZから峯田以外のメンバーが抜けてしまうことも知りました。
銀杏BOYZ 4人が揃ったライブを見るという夢は叶うことはありませんでした。
ただ『BEACH』はその夢を補ってくれるかのように銀杏BOYZの「暴」の部分のみを抉り出したようなアルバムに仕上がっていたのです。
最初の楽曲「はじまり」は鼓膜をつんざくような「ノイズ」からはじまります。普通の人が聞いたらまず「うるせぇ!」とすぐに切ってしまうでしょう。
ただ、よく聴くとノイズ音に混じって観客の歓声が聞こえてきます。そして、その歓声を殺す勢いのギター、たたみかけるように聞こえてくる峯田の訳のわからない絶叫。
とても初見では聴くに堪えないノイズに溢れたこのアルバムは銀杏BOYZのいままでのライブをリミックスしたものなのです!!!
だから僕は行きたくても行けなかった銀杏BOYZのライブに擬似的に行けたような気がして、どんどん僕はノイズの波に飲まれていきました。早まる鼓動に合わせて、楽曲はどんどん過激さを増していって。
ついには目の前に峯田がダイブしてきたんじゃないかというくらいの錯覚に襲われ…。ふと。気がついたら、僕は大量の汗をかきながら自宅のベットに倒れ込んでいました。
『BEACH』には、「カロリーゼロ」という必殺技が使われています。この必殺技は「すっきりとした写真と余白でまとめることで、風通しのいいミニマルな世界観を伝えることができる」という技。
この技は元々、観光名所の紹介や澄んだ空気感を伝えるときに役に立つ必殺技です。
ただ、必殺技を探していて割とこの技を使用したCDに出会うことが多かったので、インディーズバンド界ではプチトレンドの技なのかな?と感じました。
例えば、優しいメロディーと切ない歌詞が特徴のSaucy Dogはほとんどのアルバムで使用していたり、ゲスの極み乙女。やジェニーハイなど数々のヒットバンドを作り上げてきた川谷絵音が率いるindigo la Endのファーストアルバム『幸せが溢れたら』にも使用されています。
これらは澄んだ音楽やセンチメンタルな感情をくすぐるようなアルバムであるので、初めてこの必殺技を見つけた時の意味合いとしてはあっているものが多いです。
でも、この『BEACH』はこのカテゴリーに入れるとするのであれば、かなりイレギュラーな存在だと感じます。
いい意味で、期待を裏切るジャケット…。
ジャケットからは想像もできない、ノイズまみれのアルバム。でもあえて「カロリーゼロ」を使用したのは、ここまで9年間の銀杏BOYZで作り上げた集大成、そして先の見えない真っさらなリスタートを伝えたかったんじゃないかなと思いました。
4人編成の銀杏BOYZが出し切った。一つの区切りとなった『BEACH』。
ぜひ聴いてみてください。
2.空を見上げても空しかねえよ/忘れらんねえよ
続いては忘れらんねえよの『空を見上げても空しかねえよ』です。
忘れらんねえよは現在ボーカル柴田のみで活動しているロックバンドで、泥くさーい男って感じの音楽を得意としています。このアルバムも例外ではなく、孤独で不器用な主人公が前向きに過ごしていくような歌詞が描かれています。
僕はこういう不器用な主人公がいる楽曲が大好きで、、、
僕のこと歌ってるんか!?
というくらいズバッと心を抉ってくるような歌詞ばかりなんです。
(ちなみに菅田将暉さんも忘れらんねえよの大ファンで、俺のこと歌っているんか!?と言ったらしいです。…ほんまかいな…うっ)
もう大好きがすぎて、生まれて初めて握手会にも参加しちゃってます…。
初めは会って話せたらラッキー程度に思っていたんですが、いざとなって順番が近づくと、緊張と震えが止まらなくなり、挙げ句の果てには何を話したのかさえ覚えていません…。
帰り道に一緒に行った友達と「握手会って…いいな…」としみじみ語り合ったのはいい思い出です…。
そんな忘れらんねえよ最大の魅力は「第三者視点の歌詞」です。
好きになる女の子には、必ず別の好きな男がいます。彼氏がいることだってあるので、報われない恋なんです。しかもエグいのが、大体が彼氏とうまく行っているということ。
忘れらんねえよは好きな子が過ごしている青春に、入れなかったスクールカースト的な存在なんです。
でも、なぜか共感してしまうんです。
不器用で叶わない恋ばかりだけど、誰よりも強く夢を叶えることに必死に、誰よりも努力をしているから悔しい思いを重ねても頑張っていればいつか報われることを忘れらんねえよは教えてくれました。
特にこの『空を見上げても空しかねえよ』はいつもに増して熱量の高いアルバムです。いつもは下ネタも多く入れるんですが、このアルバムは奮い立たせるような楽曲が多いです。
確か収録されている「この高鳴りをなんと呼ぶ」は、3人編成だったころピリついたムードの中で、お互いに対する思いをぶつけるように収録したというエピソードもあった気がするので、余計に「売れて夢叶えるぞ!」ということに貪欲な時期だったのかもしれないです。
(間違ってたらすみません!!)
『空を見上げても空しかねえよ』では、クローズアップキャノンが使われています。この必殺技は「注目させたいものを拡大し、伝えたい情報を強調することができる。」という効果があります。
クローズアップキャノンはCDジャケットで使われている場面をかなりみてきました。ポルノグラフィティでは『サボテン』、ファンキーモンキーベイビーズなんて全アルバム、クローズアップしていますね…。
洋楽で言うと、パッと思い浮かんだのがキング・クリムゾンの『キング・クリムゾンの宮殿』です。音楽は知らないけど、このアルバムはみたことあるって言う人は多いはず。
おそらく、人の顔って注目も浴びやすいし、どういう感情なのかが顕著に現れるので、形のない音楽が表現する感情を再現できるのがこの技なのかもしれません。
人の顔は、感情を一撃で伝えやすい!
話を戻すと…。
忘れらんねえよにとってこのアルバムは「覚悟」を決めたアルバムなのかなと感じました。だから「クローズアップキャノン」で柴田の熱唱する姿をアップにして、雨風という逆境に負けない姿を描いているんだと思います。
1曲目の「バンドワゴン」では、馬鹿にしてきた奴らを音楽の力で見返してやる歌い、最後の曲「僕らパンクロックで生きていくんだ」ではタイトルの通り、音楽で生きていく決意表明をする。
Mステに出ている同期のバンドの姿を見て、悔しい思いでいっぱいだけど、いつか見返してやる。
逆境に絶対に負けない。
そんな感情がこのアルバムからひしひしと伝わってきます。
忘れらんねえよらしい、楽曲の数々なのでぜひ聴いてみてください。
3.勝手にしやがれ!!/Sex Pistols
パンク続きですみません…笑
どうしても好きで語れるとなるとパンクになってしまうようです。
3枚目はパンクロックを作り上げたバンドと言っても過言ではない。セックス・ピストルズの唯一スタジオアルバム『勝手にしやがれ!!』(邦題です)
このバンドとの出会いが僕の音楽の価値観を狂わせた気がします。当時、高校生だった僕はBECKに登場する楽曲を片っぱしから聞きまくって、毎日刺激的な出会いをしていたのですが、特にこのアルバムは脳天を撃ち抜かれました。
決してお世辞にも上手いとは言えない演奏。リズム感も気持ちいいとは言えない。けれど、頭にこびりつくようなキャッチーなフレーズと挑発するようなボーカル、ライドンの歌い方。
これがパンクロックじゃ!!!
と僕に教えてくれたのがセックス・ピストルズでした。ただ…それ以上に、僕はとある一人の存在に魅了されていました。
それが、ベースのシド・ヴィシャスです。
彼は元々セックス・ピストルズの大ファンで、かなり過激で大胆な騒ぎ方をしていました。また元々ボーカルのライドンとも学校で友人同士だったということもあり、初代ベースの脱退後、その穴を埋めるために、スカウトされたらしいです。
ピストルズに入った後も、ステージ上から客を刺激して殴り合いをしたり、胸に剃刀でメッセージを刻むなど、シドはとにかくいかれていました。
僕はそんな彼になぜ魅了されてしまったのか。
それはセックス・ピストルズについて、調べている時にたまたま見つけた彼が歌う「My Way」を聴いたことがきっかけでした。
元々はフランク・シナトラの楽曲ですが、パンクロック調に変えカバーをしています。
My Wayは死が近づいている人が自分の人生を振り返り、今まで行ってきたことには後悔せず、自信を持っている。これが私の道だ。と言った内容の楽曲です。
それを堂々と。
恐れるものは何もないと言わんばかりに、自分の曲として歌い上げるシドの姿を見て、自分らしく生きることの凄みを感じました。
この楽曲を出して、そこまで立たないうちに大量の麻薬摂取によるオーバードースで21歳という若さでこの世を去ってしまったシド。
僕は形は違うけれど、彼のように自分らしく生きたいと強く思いました。
そんな僕は形から入るタイプです。
シドが恋人ナンシーからかけられた南京錠ネックレスに憧れて、高校時代お金のない僕はホームセンターで南京錠を購入してお手製シドネックレスを作っていました…えへ!
…えっと。
『勝手にしやがれ!!』では「ハンコウセイメイ」が使われています。この必殺技は「文字を脅迫状のように切り貼りすることで、緊張感を生み出し、注目を集めることができる。」という効果があります。
セックス・ピストルズは、パンクファッションを確立させた存在でもあります。
それはファッションだけにとどまらず「ハンコウセイメイ」をCDジャケットに使うことも、セックス・ピストルズが発端と僕は思っています。
パンクのトリビュートアルバムとかも大体この必殺技が使われている印象です。
元々この「ハンコウセイメイ」は新聞の切り抜きを使用したりして、脅迫状のように犯人が筆跡でバレないようにつかうイメージが強いので、不気味な雰囲気や挑発的な表現をするのに長けています。
そんな技がなぜ、パンクロックに選ばれたのか。
それは70年代当時、音楽はレッドツェッペリンやKISSなどスーパーテクニックがないとできないと思われていたハードロックやメタル、プログレ全盛期に抗うようにパンクロックという存在が現れたからだと思います。
歌詞も、今まで流行っていた音楽とは異なり、社会に対する不満や鬱憤を晴らすような内容が多いので、まさに当時のライブハウスは犯罪的な環境だったと思います…。
パンクは好きだけど、音源でお腹いっぱいです…。
下手くそでも音楽で世界を変えることができることを証明してしまったセックス・ピストルズだからこそ「ハンコウセイメイ」は世界中の音楽に宣戦布告する必殺技として使われたのではないかと思いました。
4.ロマンチスト・エゴイスト/ポルノグラフィティ
4枚目はポルノグラフィティの『ロマンチスト・エゴイスト』
メジャーデビュー後、初のアルバムで、デビュー曲の「アポロ」はもちろん。アニメGTO OP「ヒトリノ夜」も収録されています。
実はそもそも僕が音楽を好きになったきっかけがポルノグラフィティなんです。
小学生の頃、両親が購入したカラオケ玩具にワールドカップ公式テーマソングの「Mugen」が収録されていて、そのイントロを聴いた瞬間にビビビッと稲妻に打たれたような感覚に襲われました。
それまで音楽に一切の興味がなかった僕が生まれて初めて興味を持った瞬間でした。今でもその瞬間だけは鮮明に覚えています。ポルノに出会ってからは、どこにいくにも必ず流していました。
勇気づけられたり、悲しい時には寄り添ってもらったり。
僕の人生のそばには必ずポルノがいました。
音楽は人生を大きく変える可能性を秘めているということを教えてくれたのがポルノだったんです。そして、ギターを始めたきっかけもポルノでした。
ギターを始めた当時はろくに弾けなかったので、誕生日に買ってもらった横浜ロマンスポルノ’06のDVDを爆音で流しながら、ギターを背負っているのにエアギター(?)をしていたのはいい思い出です…。
そんなポルノの楽曲はどれも大好きなんですが、中でも一番大好きなのが『ロマンチスト・エゴイスト』。
「初期衝動」に満ちたアルバムです。
ポルノといえば人によってはジョバイロやアゲハ蝶のようなラテン系のイメージだったり、サウダージやネオメロドラマティックのような早口の楽曲をイメージすると思います。
けれど、このアルバムはどちらかといえばJ-POPらしいバラエティに富んだ楽曲で溢れている印象が強いです。
デビュー当時は、ポルノの楽曲をプロデューサー本間昭光さんがほとんど手掛けていました。おそらくポルノグラフィティという世界観を定めるための舵取りをしていたのではないかなと思っています。
ただ、本間さんの斡旋だけでなく歌詞の要所要所にもジャニスジョップリンやボブディランなど、尊敬してきたロックスターたちに最大の敬意を払っている様子が感じ取れます。
そう考えると当時みんな一丸となって、ポルノという新生ロックバンドを世の中に投下するためにたくさん相談しながら作り上げて行ったんだろうなぁという妄想が止まりません…。
そんな『ロマンチスト・エゴイスト』には、「ハートウォーム」が使われています。この必殺技は「手書きの文字で表現して伝えたいメッセージに気持ちを込めることで、見る人の感情にアプローチすることができる。」という効果があります。
この必殺技もよくCDジャケットで見かけました。顔の次に楽曲の感情を形として表しやすいのが「ハートウォーム」だと思います。
手書きの文字はどんな人が書いたのかを想像してしまう、想像の余地があります。
大人っぽい文字だったら、お母さんや上品な女性が書いたように見え、クレヨンで殴り書きされたような文字は、自分の子どものような親近感やわんぱくなようにも見えます。
そう考えると、楽曲ごとのメッセージ性の強いバンドによく使われている傾向があるように思えてきます。
ジミー・イート・ワールドというエモバンドの『Integrity Blues』では彼女らしき女性とアルバムタイトルが手書きで添えられています。可愛らしい文字から、この女性と何かあったのかな?と想像も掻き立てられるようなジャケットです。
菅田将暉の『LOVE』にも使われていて、これはぶっきらぼうに書かれたLOVEの文字が、菅田将暉がもつ本来の無邪気さ、不器用さを描いたのではないかなと思えてきます。
手書き文字は、人柄や性格が伝わりますね。
『ロマンチスト・エゴイスト』はポルノの二面性を見てほしいという意味合いでつけたと以前インタビューで話しているのを見かけました。シングル候補でもあったバラエティーに富んだ楽曲をあえて詰め込んで、どの曲が僕らの表の顔か裏の顔なのかわからない。
ここは勝手な憶測ですが、そんなアルバムに仕上がったからこそ、裏表のない等身大のポルノグラフィティからのラブレターがこのアルバムではないかなと思いました。
どれを切り取っても名曲揃いです。
ぜひ聴いてみてください。
5.爆弾の作り方/amazarashi
最後に紹介するのは、amazarashiの『爆弾の作り方』
東京喰種のアニメEDに使われた「季節は次々死んでいく」や僕のヒーローアカデミアのアニメOP「空に歌えば」などが有名です。
ピアノとギターボーカル、2人編成のバンドなんですが、このバンドの最大の特徴は顔出しを一切していないということ。
今やAdoやヨルシカ、Eveなど多くの顔出ししないアーティストが多いですが、amazarashiは2010年ごろから活動しているので、かなり早い方かと思います。
ただ、ライブはやります。生演奏のライブです。
顔出ししていないのにどうやってやるんだろうって思いますよね?
その答えがこちらです。
客席とステージの間に超巨大スクリーン!!
そう、amazarashiは顔出しをするときにマスクをかぶるとか、暗くするとかそういうわけではなく、間にスクリーンを挟むことで楽曲の世界観を最大化させているのです!
このライブは一度見ると圧巻です。終わった後にはとんでもないものを見ちまったな感が半端なさすぎて、言葉になりません。
僕は行けなかったのですが、幕張メッセで行われたライブでは360°スクリーンライブも行っていました。
(もう規模デカすぎてしゅごい…。)
この映像を見てお気づきの方も多いと思うのですが、amazarashiは楽曲の世界観を何より大切にしているバンドです。一説では顔出ししないのも、楽曲に耳を傾けてほしいからとも言われています。
僕とamazarashiの出会いは大学生の頃で、音楽好きの友人にこの『爆弾の作り方』を教えてもらい、衝撃を受けました。
それからどハマりして、2011年には恵比寿リキッドルームの1stライブを見に行ったり。2014年の今はなき渋谷公会堂では当時の彼女を差し置いて、クリスマスにライブを見に行ったりもしていました…へへ。
そんなamazarashiは今まで紹介してきたアーティストとは打って変わって、シリアスな楽曲が多いです。
情景が目の前に思い浮かぶくらい生々しい歌詞は、心の葛藤や社会に向けての赤セージが顕著に描かれています。ある意味、パンクロックと言っても過言ではないかもしれません。
夏を待っていましたという楽曲では、小学校の頃の記憶を振り返り当時虐待を受けていたであろう友人に手を差し伸べることができなかったこと、みんなを引っ張っていた友人が飛び降りてしまったことなど。
現在の社会問題を幼少期の頃の思い出と置き換えるような内容の楽曲が収録されています。
そんな『爆弾の作り方』には「アノトキプリント」という必殺技が使われています。この必殺技は「わら半紙を使用することで、学校のプリントのような、どこか懐かしい雰囲気を生み出すことができる。」という効果があります。
この必殺技は日本独自のものだなと思います。わら半紙なんて、おそらく海外の学校では使っていないんじゃないかなと思うので…。
(使っていたらすみません!)
そして何より、今の子どもたちはわら半紙という存在を知らない可能性もあるのではないかなと思います。もしかしたら、時代に合わせてなくなってしまう可能性もある必殺技だなと思いました。
もともとこの技は、活版印刷とも相性がよく。レトロな印象をつけるにはもってこいな技です。例えば、筋肉少女帯や大槻ケンヂと絶望少女達のような大正ロマンを彷彿とさせるバンドにはかなりフィットすると思います。
さて、話を戻すと『爆弾の作り方』は主人公の幼少期をなぞった物語だったり、社会不適合者の主人公が登場したり。過去に何かを囚われていたり、トラウマがあることで起きてしまう問題が多々扱われているのかなと感じています。
「アノトキプリント」は学校のプリントのような誰しもが知る懐かしさを奮い立たせる必殺技なので、きっとこの楽曲の主人公たちや聞いてくれた人たちの過去を抉り、そして、強いメッセージ性で包み込んでくれる。
そんなアルバムだからこそこの必殺技が使われたのではないかと思いました。
幼少期の出来事ってふとしたアイテムで、フラッシュバックしますよね。
余談ですが、このアルバムには収録されていない曲で、amazarashiで特に思い入れの深い曲「ひろ」を紹介させてください。これはギターボーカルの秋田ひろむさんが今は亡き大切な友人に向けて歌った楽曲です。
amazarashiとして売れて、アーティストとして戻れないところまできた秋田ひろむさんの決意表明だと僕は思っています。
これ以上語るのは野暮な楽曲ではあるのですが、「ガキみたいって言われた 無謀だって言われた それなら僕も捨てたもんじゃないよな」という歌詞が、友人の年齢をはるかに追い越してしまっても当時の熱量はまだ残ってるから安心しなって伝えているようでかなりうるっときます…。
ぜひ…聞いて…。
おわりに
ということで、CDジャケットに使われている必殺技はいかがでしたでしょうか。
僕も好きな音楽を紹介することができて、さらにはデザインの勉強をすることができたので、一石二鳥な記事でした。
やったぜ!!!!
デザインの必殺技は街中に溢れかえっています。
360°どこを見渡してもほとんど人がデザインしたものばかりです。
ここでは僕の得意な音楽にフォーカスした紹介をしましたが、デザインに溢れた日常の中であなただけの必殺技を見つけて、自分の引き出しにしまってみてはいかがでしょうか。
あとこのCDジャケットに必殺技使ってるじゃん!など見つけた場合は是非教えてください。
今後も他のNASUメンバーのスーパーマニアック記事が続く予定なので、ぜひお楽しみに!
最後までありがとうございました!
必殺技と音楽最高〜〜〜〜〜!!!
PS.
今回集めた他の楽曲も聴きたかった〜という方。安心してください。
コメントは書いていないのですが、YouTube Musicのプレイリストにまとめてみました。もし好きな音楽と出会えたら教えてください!
人生を変えるような音楽に出会えますように。