「俺たちはこんなもんじゃない!」熱い想いを胸に秘めたNASUの新卒デザイナー
2023年4月、株式会社NASUに新卒の社員3名が入社しました。
そのうちの一人が学生時代からアルバイトとしてNASUで働いていた、デザイナーの小賀雪陽(こがゆきはる)さん。
小賀さんとNASUとの出会いやデザイナーを目指すきっかけ、社員となった現在のこと、そして目標とするデザイナー像について伺いました。
株式会社NASUの小賀雪陽です。
———まずは自己紹介をお願いします。
小賀:HAL大阪という専門学校のグラフィックデザイン科から入社した、小賀雪陽(こがゆきはる)です。NASUにはアルバイトとして3年生の2月頃に入り、この春からは社員として働いています。ちなみに出身は、滋賀県の信楽で、僕の隣にあるこの狸の置物は信楽焼職人の父が、NASU用にオリジナルで作ってくれたものです。
前田:僕が小賀くんを通してお父さんにお願いしたんだよね。ありがとうございます!
———NASUを知ったきっかけを教えていただけますか?
小賀:きっかけは前田さんのnoteで、『それは、デザイン案ではない。』という記事です。
———そのnoteはどのように知ったのですか?
小賀:確か、学校の先生の紹介だったと思います。
前田:ああ、僕も知ってる立石先生の紹介かな?「これ読んどきや〜」(立石先生のマネ)
小賀:(笑)。そんな感じだったと記憶しています。
前田:その立石先生というのは、僕が高校時代から通っていたアトリエで一緒だった同級生なんだよね。この近くにある中の島美術学院で。
小賀:『勝てるデザイン』もちょうどその頃、予約が始まっていたんです。noteを読んで感銘を受けたので、そのまま本も予約しました。NASUというか、前田さんを知ったのはそれが最初ですね。
2度目の応募でアルバイトとして採用
———NASUとの接点は、アルバイト募集でしたよね?
小賀:はい。前田さんがX(旧Twitter)で「デザイナーを募集しています」と投稿されていたのを見てDMしました。
前田さんのnoteや『勝てるデザイン』を読んで、すごい方だなと思ったので……。具体的に言うと、デザインの考え方です。
学校の授業でもそういったことを聞いてはいましたが、前田さんの場合はさらに一歩、二歩、三歩先まで考えているっていうか。そこまでクライアントさん目線に立ったお話は、あまり聞いたことがありませんでした。
実は僕、NASUのアルバイトには2回目の応募で採用されたんです。
前田:そうそう。
小賀:1回目はまだ経験不足ということでダメでした。でも、その後また募集があったので、2回目のDMをさせてもらいました。
前田:2021年4月だったかな?
———2回目も諦めずに。まだチャンスはあると思ったんですね。
小賀:そうですね。ただ純粋にチャレンジし続けようって思っていました。
前田:諦めずにアプローチしてくる学生はなかなかいない。そういうアンテナというか感度はいいなと思って。
———前田さん、小賀さんの面接での印象は覚えていますか?
前田:うーん、どうだったかな……(笑)。でも普通によかったと思う!
映像からグラフィックデザインへの進路変更
———HALでデザインを学ぼうと思った理由についても伺えますか?
小賀:もともとはグラフィックデザイナーではなく、映像の方に行きたくてHALに入学しました。高校の卒業制作でゲームの3Dプロジェクトに関することをしたときに、作る楽しさを知ったんです。そこで、何か「作る」ことをしたくて。
HALでは最初のうちは映像もデザインも、幅広く勉強するんですが、その後に専門的なコースに分かれる段階でグラフィックデザインのコースを選びました。
———グラフィックデザインに志望が変わったきっかけには何があったのでしょうか?
小賀:そうですね……。言い方が正しいかわからないのですが、映像作品は大きなチームで制作することが多いんです。そのチームが大きくなればなるほど、オペレーター的に作業をしている感覚になってしまって。自分で「作っている」という実感がないことに悩んでいました。
そんなとき、noteを読み漁っていたら前田さんの記事を見つけたんです。
———それは「作る」ことのもっと本質的な部分、源流みたいなところに行きたい、みたいな感じですか?
小賀:そうです!
前田:そんな人生を変えるほどの。すごい!もっと言ってよ〜。
———ということは、前田さんのnoteを見たのとコースを選ぶ時期は近かったのですか?
小賀:近いですね。ちょうど同じくらいの時期でした。
———前田さんが運命を変えたとも言えますね! ビビッとときたんですね。
小賀:そうですね。ビビッと。
前田:こんなことができてしまうんだなぁ……。照れちゃう!
小賀:(笑)。
———NASUでのアルバイトはどうでしたか?
小賀:Xで見た感じのままで、特にギャップはありませんでした。
———デザイン以外にも備品の買い物なども頼まれていますよね。
前田:買い物もデザインセンスが必要だからね(笑)。アルバイトの頃に買ってきてもらった三脚は使いにくくてダメだったけど、最近選んでくれた神棚は、よかったよ!
小賀:あれは僕の代表作です(笑)。
アルバイトと並行して新卒採用に応募
———NASUでアルバイトを始めた数ヶ月後には新卒募集がスタート。小賀さんもエントリーしたんですよね。
小賀:はい。ただ、他にも気になっている会社はありましたし、NASUに応募するのも始めは迷っていました。迷っている状態では失礼だと思ったので、他社も見てみてやっぱりNASUだ、となってから応募しようと。
なので、周囲の学生ほど多くはないと思いますが、NASUの他にも何社か受けていました。選考が進むにつれてNASU一本に志望を絞りましたけど。
———最終面談の課題は「スプリンギン」というアプリを使ってゲームを作るというものでした。見たことのないアプリを使うことに加え、企画力、デザインなど、結構タフな課題でしたよね。
小賀:僕は高校時代の卒業制作でゲームを作りましたし、情報系の学科だったのでゲームを作るようなソフトを使ったこともありました。そういう経験も多少はあったので、あまり苦にはならなかったです。
ただ、チュートリアルを探して同じようにやっても、なかなかできないところもあって。トライアンドエラーでしたね。実際に作成したゲームはこちらです。
前田:作るスピードは早くはなかったよね。企画の段階で詰まってしまってたんだよね。
小賀:作る工程が短かくなってしまいました。
前田:でも、最後までやり切った。やり切って、その上でブラッシュアップもできてるからすごい。他の会社の就活もして、学校にも通いながらだったけど、最後はいいものを持ってきたね。
小賀は作り込んできていたし、同期のむらちは企画力がよかったという感じかな。
———内定が出てから入社までの間は、前田さんはアルバイトであっても変に手加減せずに厳しめに小賀さんの仕事を見ていました。そういった点は大丈夫でしたか?
小賀:それはあまり感じてなかったと思います。
前田:動じないなぁ。ちょっとは焦ったりしないの?
小賀:焦ってはいましたけど、「しんどい」というのはなかったです。
———焦っていたというのは、内定が出た頃からですか?
小賀:はい。特にいつも指摘いただいてる「遅い」っていう点です。
例えば内定式に向けて内定書を作っていたのですが、めちゃくちゃなスケジュールでやってしまっていたんですよ。内定式前日にデザインを確認してもらって、そこから印刷して、という。
それで前田さんに「どういうスケジュール立ててるんや?」って。
前田:あの時にダメって言ったらすべてが終わるからね。
———早くしないとこんなことになるんだと、そのときに感じたのですね。
小賀:はい。
入社後「ビジネスマンとして」とは?
———社員として入社後、心境の変化はありましたか?
小賀:そうですね……えっと……。
前田:グループLINEの話は?
小賀:「俺たちはこんなもんじゃない」ですか?
前田:タイトル決まったね。『俺たちはこんなもんじゃない!』(笑)。
———NASUの新卒3人組で作っているグループLINEに「俺たちはこんなもんじゃない!」という熱い言葉を送ったらしいですね(笑)。それはどういう流れだったのですか?
小賀:正確な時期は覚えていないのですが、僕だけじゃなくて同期3人ともがいっぱいいっぱいで「うわぁ〜っ」となってたときがあって。そのときに「俺たちはこんなもんじゃないよな!」って送ったんです。
———ほかには Xでも「今に見てろって思ってます」と呟いていましたし、実は熱いものを秘めているタイプですよね?
前田:まじで? どんどん出せばいいよ、そういうの。
小賀:はい。以前、前田さんやマッキーさん(NASU社員のマッキーこと中川誠也さん)とごはんに行ったときにも前田さんに「小賀、そんなに熱いんだったらもっと出していったらいいよ」って言われたことがあったので、そこからはちょっと意識してます。この投稿も前田さんにそう言われた後のものですね。
でも、こんなこと書いたらどういう見られ方をするのかなって気になってしまって……。
前田:誰も見てないよ。意外とみんな気にしてないって。心のスーツ脱げよ〜。「スーツは着るけど心のスーツは脱ぐんです」。タイトルこれもいいな!
———前田さんから見て、入社してからの小賀さんはどうですか?
前田:だんだん萎縮してる感じが増してる気がするな。アルバイトの面接のときの方が普段の小賀に近い感じがするかな。焦っているというのもあるんだろうけど。
だから「こういうことしたら?ああいうことしたら?」とはときどき言ってるよ。自分で見つけたことだけをやって成果を出すんだったら、結局何も変わらないから。
———例えばどんなことですか?
前田:最近はスーツで仕事をしろ、とか。デザイン力より仕事力と言うのかな。デザインって芸術家っぽいって思って、自分に酔ったりしてない?
———たしかに、髪型もロングでアーティストっぽかったですね。
前田:そうそう。「うーん、わからない、できない……。気に入らない壺ができた……。ん?あれ?できた!」みたいな、そういう作り方してるんじゃないのかな? そういうのは違う、芸術家よりもビジネスマンになってよ、という話をしたよね。
そのときに髪型のこともスーツのことも言って、「ビジネスマンになってよ」って。
小賀:それを言われてから、スーツを着るようになりました。
前田:あと、最近言ったのは「Figma」を使えるようになったら?とかも言ったね。Figmaが使えたら物量がこなせるから会社も助かるし、仕事を早くしないと、という焦りも解決するだろうし。
———なるほど。「しかし、今はそれで良い!」というXでの投稿も熱かったですね。
小賀:「いいね」もたくさんもらいました(笑)。
前田:感情が見えたからじゃない? 人は感情がこもったものを見たくなるから。周りがなんと言おうと、縮こまっていないで感情を出すことに意義があるよ。
小賀:縮こまるっていうのは、心のスーツを着てるという……?
前田:そうそう。「角刈りにしたら?」って言ったときも、小賀はきっとその意味をわかっていたよね。
小賀:はい。
———仕事力も合わせて、ビジネスマンとしてデザインできるようになって欲しい、ということを?
前田:そうそう。(芸術ではなくて)デザインだけにして欲しい。当分は。
まあ、小賀は素直だから、入社した4月〜7月まででもだいぶ変わってきてるしね。その調子でいって欲しい。
———この4ヶ月でもいろいろありましたよね。図録カバーやチラシを作ったり。汗と涙の結晶ですよね。
小賀:はい、この図録とチラシは特に思い入れが強いものです。NASU5周年の時に開催したNASUポスター展の商品である図録のカバーを、1から制作しました。
図録カバーは、NASUメンバー全員のポスター作品をコラージュしています。
柄に見えるようにデザインしていますが、程よい抜け感と、程よいデティール感のバランスを取るのが難しかったです。色はNASUパークカラーで3色ありますが、どの色が買えるかはランダムでした。
また、チラシ制作はNASUのオフィスクラウドファンディングの中で、「小賀がフライヤーを作ります」というリターンがあり、ご支援していただいた方と、何度も打ち合わせをしてようやく完成させたものです。
クライアントさんと直接やりとりをたのは、このときが初めてでした。
社会人として当たり前のことが、全くできていなくてたくさんご迷惑おかけしました……。
———なかなか新卒1年目とは思えない多くの経験をしていますね。
小賀:はい、そうだと思います。
———ほかに、心境の変化はありますか?
小賀:角刈りはできてないんですけど、助言いただいたことはとりあえず全部やろうと思っています。ピンときてないものもありますけど……。10割中、3割くらいきてないんですけど……。
前田:だいぶきてないな(笑)。
小賀:あ、すみません! 8割、8割くらいはピンときてました!
前田:正直に言って大丈夫だから(笑)。
小賀:でも実際にやってみると、見た目が変わると内側も変わっていくなって実感しました。
———ところで以前、「僕は誰よりも出力する男になる」と投稿していましたよね。なので、この場所(ホワイトウォール)でインタビューをしているのですが。
※ホワイトウォール……NASU社内の一角にある白い壁のスペース。ここに制作中のデザインを貼って検証しています。
前田:あまり貼ってるの見たことないな。僕が一番貼ってるもん。宣言するのはいいことだけどね。急に熱くなってスイッチ入って急に冷めるの?
小賀:僕はあまり冷めている自覚はないんですけど。
前田:普段から熱い感じ?
小賀:はい、そうですね。
前田:じゃあ今度、友達みたいな感じで飲みに行こうよ! 僕のこと「前田」って呼んで。友達といるときみたいな普段の小賀を見せてよ(笑)。
小賀:いいんですか(笑)。でも、萎縮してるという自覚はないんですけどね……。
前田:普段の自分を出してって言っても、それも難しいのかもね。
NASUの中で何かひとつ、小賀といえばこれ!みたいなポジションを確立できればいいのかな。やっぱりFigmaとかがすごくいいんじゃない?
誰よりも使いこなして、バナーとかも一瞬でできたりとか。
まずは一人前のデザイナーになるのが目標
———今後の目標を教えてください。
小賀:今はアシスタントデザイナーなので、まずはデザイナーになることです。
具体的に言うと、前田さんが以前「これができたら一個上がる」というデザイナーとしてのステップを具体的に挙げていましたよね。細かい指示を必要としない、検証がちゃんとできるようになるとか、スピードもそうですけど。そういうところをクリアすることですかね。
———では、野望のようなものはありますか? もともとの目標だった映像を作るとか。
小賀:今はまだ目の前のことで頭がいっぱいなので、特にはないですね。
———今は目の前のデザインに全力投球で。
小賀:はい!
前田:じゃあ「友達飲み」行こう! 僕(心の年齢が)26歳やから、あんま変わらんやろ。
小賀:(笑)。
〈 文=奥村佳奈子 (@KANA_vintage)/ 編集=浜田綾(@hamadaaya914)中山乃愛(@noa_liriope)/撮影・バナーデザイン=村山歩弓( @___mu110)〉